日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: O - 45
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口述 8
外国人技能実習生に対して理学療法士が関わる意義
*堀 平人今井 沙耶中村 俊介小林 恵美小林 勇太田中 厚吏
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抄録

【はじめに、目的】

日本で働く外国人労働者は年々増加しており2024年には200万人を超えており、在留資格のうち技能実習は20.1%を占めている。2017年より介護技能実習生の受け入れが始まったが、介護や製造業等重労働を伴う外国人技能実習生は来日初期の調査前半に筋骨格系の不調があり (相田2023)、労働災害の約5割が実習開始から1年未満に発生していると報告されている。今回、当院にて受け入れた外国人技能実習生に対して研修を行う機会を得た。その経験から外国人技能実習生に対して理学療法士が関わる意義について検討する。

【方法】

対象はミャンマー国籍の技能実習1号の女性2名 (平均年齢29.5歳)。研修期間は2023年9月から2024年4月までの計5回。研修内容は身体介護業務及び安全衛生業務であり、いずれも指導責任者の管理下で実施し、初回の研修を除く2回目より記入式のアンケート調査を計4回実施した。調査内容は、現在自覚する疼痛について部位、発生時期、程度Numeric Rating Scale (以下 NRS)、ケスラー心理尺度 (以下K6)、Utrecht Work Engagement Scale (以下UWES)とした。

【結果】

初回の調査では、2名共に疼痛部位はなく、NRSとK6は0点で ありUWESはそれぞれ47点と48点であった。2回目の調査時に 2名ともに腰痛の自覚を確認出来た。それぞれNRSは2と3であり、K6は0→2点、0→1点、UWESは47→44点、48→44点となっていた。研修内容を一部変更し腰痛教育と介護技術の確認、自主トレーニングの指導を行った。

3回目の調査時にはそれぞれ腰痛は消失しており、NRSは2→0、3→0、K6は2→0点、1→0点、UWESは44→49点、44→49点であった。4回目の調査でも腰痛の再発はなく技能実習を継続することができていた。

【考察・結論】

これまでの報告と同様に来日初期にあたる実習開始3ヶ月後に腰痛を自覚したが、理学療法士との継続的な関りを持っていたことで腰痛への対処、再発予防をすることができた。

職業性腰痛には身体的負荷以外にも仕事の満足度や精神的ストレスをはじめとする社会心理的要因が関与すると指摘されており、文化や言語の異なる環境で労働する外国人技能実習生は日本人労働者と比較して腰痛発症や慢性化のリスクが高い。

今後、さらなる増加が見込まれる技能実習生が健康に過ごすための支援として理学療法士が継続的に関わることは、技能実習生の健康管理に貢献することができるのではないかと考える。

【倫理的配慮】

対象者にはヘルシンキ宣言に基づき、研修内容及びアンケート調査結果を研究発表として報告する旨の説明を書面にて行い、個人が特定されないことを説明し同意を得た。

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