日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: O - 44
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口述 8
中年層の身体活動量が身体機能・生活習慣病関連因子に与える影響
*浦谷 明宏浜野 泰三郎山本 遼山本 諒白石 明継乾 香織
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抄録

【はじめに、目的】

我が国の座位行動時間は世界20か国で最長であり長時間の座位行動の是正や身体活動の促進に取り組むことは健康作りの観点から喫緊の課題である.現在,身体活動量に関する検討は非感染性疾患発症の前段階である中年層を対象にした検討は限定的である.そこで本研究の目的は中年層の運動器健診受診者の身体活動量と座位時間を把握し,身体機能や生活習慣病関連因子に与える影響を明らかにすることである.

【方法】

対象は2022年4月から2024年3月までに当法人人間ドックにて運動器健診を受診した40歳~64歳の179名 (男性81名女性98名 平均年齢53.6±6.6歳)を解析対象とした.調査項目は基本属性が年齢・性別・身長・体重・BMI・体脂肪率,生活習慣病関連因子が腹囲・血圧・空腹時血糖・中性脂肪・HDL-C,身体機能項目が握力・CS30・片脚立位時間・2ステップ値・指床間距離とした.身体活動は国際標準化身体活動質問紙を用い週あたりの総身体活動時間と1日あたりの座位時間を算出した.統計はまず高強度の身体活動が75分/週以上の群 (高強度群)とそれより少ない群 (高強度未実施群)に分けた.次に中等度以上の活動を 150分/週以上実施した群 (中等度以上活動群)とそれより少ない群 (不活動群)に分けた.最後に座位時間が480分/日以上の群 (座位長時間群)とそれより少ない群 (座位短時間群)の2群間に分け,全ての検討は性別毎に対応のないt検定で有意差を確認し効果量 (d)を算出した.統計はSPSS20を用い有意水準を5%未満とした.

【結果】

高強度群の割合は男性27.5%女性14.4%,中等度以上活動群の割合は男性35.8%女性17.3%であった.座位長時間群の割合は男性38.2%女性31.3%であった.高強度活動の有無による比較では男性のみ握力 (P=0.03,d=0.57)・片脚立位時間 (P=0.01,d=0.49)・指床間距離 (P=0.01,d=0.66)に有意差を認め,中等度以上活動の有無による比較では男性が指床間距離 (P <0.01,d=0.96)・腹囲(P=0.03 d=0.39)・最低血圧 (P=0.03,d=0.17)に女性が握力(P=0.02,d=0.67)に有意差を認めた.座位時間は女性のみHDL-C(P=0.03 d=0.48)に有意差を認めた.

【考察】

高強度の運動を短時間実施した群は筋力・バランス能力・柔軟性を高く維持でき,不活動群は柔軟性が低下し生活習慣病関連因子が有意に増加していた.身体機能の評価指導と身体活動量の促進を強みとする理学療法士が健診領域で将来の健康被害を予測し介入する意義は高い.

【倫理的配慮】

本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき,当院の臨床研究審査委員会の承認 (承認番号:4386号)を受けるとともに,収集した個人情報に関しては,当院の個人情報保護規則を遵守し取り扱った.また,当院所定の様式を用いて,研究の目的と概要,対象患者,研究に使用されるカルテ情報等を文面化したものを倫理指針に従って当院ホームページにて対象者へ情報開示を行った.

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