主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第59回 日本理学療法学術大会
会議名: 第11回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 仙台大学(宮城県柴田郡柴田町)
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【目的】
我々は認知課題を課したFrail CS-10 (DT Frail CS-10)を用いて歩行能力と転倒リスクの検討をし,DT Frail CS-10が2回以下で転倒回数が多くなったことを報告した.
そこで今回は,DT Frail CS-10が認知機能の一つである注意を反映する評価になりえるかを検証した.
【方法】
対象は,2023年9月から翌4月まで当院に入院していた,歩行可能な患者50名 (男16名,女34名,平均年齢75.3±11.1歳,運動器44名,脳血管6名)であった.
アウトカム評価は,Frail CS-10,DT Frail CS-10(Frail CS-10を実施しながら100から順じ2を減算),TMT-Jとした. 分析方法は,Frail CS-10とDT Frail CS-10との相関関係を調べ,中央値より高い群と低い群とに対象を2群に分類しTMT-Aおよび TMT-Bを比較した.
統計処理は,スピアマンの順位相関係数とマン・ホイットニーの U検定を用い有意水準を5%とした.統計ソフトはEZR(ver.1.64)を使用した.
【結果】
Frail CS-10とDT Frail CS-10とは相関関係にあった(r=0.785,P< 0.001).またFrail CS-10とDT Frail CS-10の TMT-A(r=-0.3,P=0.034, r=-0.481,P<0.001)および TMT-B (r=-0.396,P=0.004,r=-0.556, P<0.001)とも相関関係にあった. FrailCS-10の高い群 (4回以上)と低い群 (3回以下)における TMT-A・ Bの比較では,有意差を認めなかった.一方,DT FrailCS-10低い群 (2回以下)のTMT-Bは,高い群 (3回以上)よりも有意に所要時間を要した(P=0.034).
【考察】
今回の研究ではFrail CS-10とDT Frail CS-10とは強い相関関係があり,DT Frail CS-10はTMT-AとTMT-Bともに中程度相関関係があった.
Frail CS-10はTMT-AとTMT-Bともに有意差はなく,これはFrail CS-10が運動機能を中心に評価していることを示している.一方 ,DT FrailCS-10はTMT-Bにおいて有意差があった.これはDT Frail CS-10が注意の要素を反映しており,より高次の配分性注意やワーキングメモリーを評価していると言える.
【倫理的配慮】
本研究の倫理的配慮として八反丸リハビリテーション病院の倫理委員会の承認を受け,対象者には目的や方法を十分に説明し署名にて同意を得て実施した.