日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第42回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 42_1-P-A-7
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一般演題(ポスター)
日本の一般病院労働者における新型コロナウイルス抗体陽性率についての観察研究
*吉原 達也伊藤 一弥財津 將嘉Chung Eunhee加治 良一都留 智巳米村 拓麿山口 浩司松木 俊二入江 伸
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抄録

【目的】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的な健康問題を引き起こしている。日本の感染者数は、確定患者数や一般住民対象の大規模抗体検査陽性率(2020年6~9月:0.03-0.40%、2020年12月:0.14-0.91%)より、欧米諸国に比べて相対的に少ないと考えられている。しかし、医療従事者は感染リスクが高いと一般的に考えられており、海外の報告では医療従事者の抗体陽性率は一般住民よりも高いとされている。一方、日本ではCOVID-19患者受け入れ医療機関職員における抗体検査陽性率については若干の報告があるものの、一般病院からはほとんど報告がない。そこで、本研究では、当医療法人で働く人を対象として抗体検査陽性率の調査を行った。【方法】医療法人相生会博多クリニック臨床試験審査委員会の承認を得て、2020年8月と2020年10月に当医療法人の医療施設で働く人のべ2160名(年齢20-83歳、平均年齢41.9歳、女性1547名)に対して新型コロナウイルス抗体の検査を行った。抗体検査は血液検体を用いてイムノクロマトグラフィー法(INNOVITA社, Tangshan, China)により行った。【結果・考察】2020年8月は2142名、10月は2081名で抗体検査を実施した。2020年8月、10月ともにIgG抗体陽性率は1.2%であったが、2020年4月に院内感染が起きた1施設を除くとIgG抗体陽性率は2020年8月、10月ともに0.8%であった。治験実施施設では8月、10月とも0%であった。8月にIgG抗体が陽性であった22名中21名(95.5%)で10月もIgG抗体陽性であった。IgG抗体が1度でも陽性であった28名のうち17名(60.7%)では2020年2月以降にCOVID-19を疑う症状を認めていた。COVID-19の診断歴のある14名のうち10名(71.4%)でIgGが陽性であった。年齢別の比較では20-29歳と60-69歳のグループでIgG抗体陽性率が高かった。抗体陽性率に男女差は認めなかったが、職種別では看護師、介護職員、受付職員では1.7~3.0%と有意差はないが多い傾向にあった。【結論】日本の一般病院における新型コロナウイルスIgG抗体陽性率は2020年8月、10月とも1.2%であり、同時期の一般住民における陽性率よりも高い傾向にあった。これは院内感染が起きたことも一因であると考えられた。医療従事者は感染リスクが高いと考えられるため、一般診療や臨床研究を行うにあたり引き続き感染対策や社会的なサポートが重要である。

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