日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第42回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 42_2-S24-2
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シンポジウム
包括的がん遺伝子プロファイリング検査後の治療戦略;地域がんゲノム拠点病院の立場から
*濱口 哲弥牧野 好倫長谷川 幸清藤野 節吉田 裕之福島 久代平崎 正孝榊原 彩花鎌倉 靖夫松野 紗由美
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抄録

埼玉医科大学国際医療センターは埼玉県日高市に所在する、主に埼玉県北西部を医療圏とする埼玉医科大学附属の病院のひとつである。当院は院内がん登録数では年間5,000名弱と全国で6位、大学病院ではトップであるように、多くの地域がん患者の診療に携わっている。当院は2018年4月に厚生労働省から「がんゲノム医療連携病院」に指定されたと同時にがんゲノム医療センターを設立し、がんゲノム医療中核拠点病院である国立がん研究センター中央病院、慶応義塾大学病院と連携して、がんゲノム医療への取り組みを開始した。また、2019年9月には「がんゲノム医療拠点病院」に指定され、地域の連携病院とともにがんゲノム医療を推進している。包括的がん遺伝子プロファイル検査として、当院ではNCCオンコパネル、FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル検査、およびFoundationOne Liquid CDxがんゲノムプロファイル検査を保険収載時よりおこなっている。このようなパネル検査後の治療戦略としては、(1)コンパニオン診断として用いてNTRK融合遺伝子におけるNTRK阻害剤や前立腺癌のBRCA遺伝子変異におけるPARP阻害剤のように保険診療に繋げる、(2)医師主導も含めた治験や患者申出療養制度に繋げる、(3)自由診療に繋げる、の3つの選択肢が挙がる。当院では(1)(2)を優先しており、(3)に関しては診療科から院内の適応外使用審査委員会に申請があれば検討される仕組みはあるものの未だ実施例はない。2019年12月から2021年8月末までにエキスパートパネルを実施した症例数は201件であった。うちエビデンスレベルD以上で推奨治療法ありとなった症例数は103件であり、実際に推奨治療または治験を紹介もしくは実施できたのは27例(13.4%)であった。この27例の内訳は、(1)保険診療8件、(2)治験や患者申出療養制度で他院紹介15件、当院治験実施4件であった。今後、エビデンスレベルD以上で推奨治療ありとなった症例の薬剤到達性の向上が当院にとっての課題である。その際、治験や患者申出療養制度を多く実施しているがんゲノム医療中核拠点病院である国立がん研究センター中央病院や東病院までは、公共交通機関を使うと片道1.5時間程度かかるため、当該患者にとって通院そのものが大きなハードルとなる。このような患者の薬剤到達性の向上を図るためにも中核拠点病院のみならず拠点病院でも同様の治療が提供できる体制整備が必要であると考える。

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