日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第42回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 42_3-S41-5
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シンポジウム
小児医薬品ネットワーク・小児治験ネットワークの活動と国際連携
*中村 秀文
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抄録

わが国は欧米と比べ小児医薬品開発が遅れており,欧米のような小児医薬品開発を義務化する法整備も必要であるとの議論もある.しかし,我が国の小児医薬品開発体制が整備されなければ,治験を義務化したとしても,治験の実施は難しい.本講演では現在進行しているアカデミアによる治験体制整備の取り組みを紹介する.2017年に日本小児科学会は,AMED事業により「小児医薬品開発ネットワーク」を組織し,2020年からは厚生労働省の補助事業として活動を展開している.本事業では,日本小児科学会が中心となり,関連学会と協同でネットワークを組織し,製薬企業が開発中・開発計画中の医薬品について,その領域の専門家が本邦での小児診療における重要度等を検討するとともに,企業の治験実施の支援・協力を行う体制を構築している.治験の経験がない領域や,過去に治験の進捗が思わしくなかった領域に対しては,経験のある小児科医や国立成育医療研究センター・小児治験ネットワークのノウハウを提供している.このネットワークとは別に,厚生労働省の事業(平成23年1月-平成25年3月)により,日本小児総合医療施設協議会の加盟施設を中心に,多施設治験の実施インフラとなる,参加施設27施設の「小児治験ネットワーク」が構築され,その中央事務局と中央治験審査委員会(IRB)事務局が国立成育医療研究センターに設置された.活動を拡大し令和3年4月1日時点では55医療機関が参加している.このネットワークでは中央事務局を窓口として,参加施設における新規治験の実施可能性及び被験者候補症例数調査,中央治験審査委員会審査(39施設),手順やアセント文書の統一化,オンデマンド方式による治験などを実施している.さらに小児CRC部会を中心に小児治験に特化した人材育成も行っている.2020年度からは小児CRCが「小児医薬品開発ネットワーク」のWGに参加し,治験実施面でのより具体的なアドバイスも行っている.「小児医薬品開発ネットワーク」では,さらに国際連携と海外からの治験誘致を念頭に,海外のネットワークである米国のiACT for Childrenと守秘義務契約を締結し,また欧州のConnect4ChildrenやEMAの小児医薬品評価ネットワークであるEnpr-EMAとも連携準備を進めている.今後このような国際連携と現場の体制整備を進めることで,小児治験の実施インフラがさらに強化されることを期待している.

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