日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_3-C-P-091
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一般演題 ポスター
VigiBaseを用いた東及び東南アジア諸国の副作用発生状況の比較 -抗精神病薬及び免疫抑制剤の解析-
*佐井 君江斎藤 嘉朗
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抄録

【目的】ドラッグ・ラグの解消に向けた効率的な国際共同治験の推進には、民族差の検討が重要である。特に民族的類似性の高い東・東南アジア地域は、pooled regionの概念が導入されたICH E17ガイドラインに基づく開発が期待されているが、副作用の発現に関する国・地域差やその要因に関する情報は十分に蓄積されていない。本研究では、グローバルの副作用報告データベース(VigiBase)を用いて、抗精神病薬及び免疫抑制剤を事例として、東及び東南アジアにおける副作用発現状況及び地域間の違いの有無やその特徴を評価、考察することを目的とした。【方法】VigiBaseを用いて、東アジア(日本、韓国、中国は抗精神病薬のみ)及び東南アジア(マレーシア、及びフィリピンとシンガポールは抗精神病薬のみ)、及び非アジア(米国)の症例報告データを解析した。評価対象薬として、抗精神病薬はアリピプラゾール、免疫抑制剤はトシリズマブとし、国ごとの報告バイアスの調整のため、それぞれの同効薬であるオランザピン及びメトトレキサートを各国共通の比較薬とした。対象副作用は、MedDRA器官別大分類または標準検索式を利用し、抗精神病薬に関しては、神経系障害及び精神障害、免疫抑制剤に関しては、感染症、骨髄抑制、間質性肺疾患及び良性・悪性腫瘍とし、国別に薬剤別の報告割合、及び比較薬に対する報告オッズ比(ROR)を算出し、国間でそれらの傾向を比較した。【結果・考察】東南アジアからの報告件数は限定的であったが、共通の比較薬を用いた解析から、対象医薬品ごとに特徴的な副作用の発生動向(ROR)は、日本と東アジア、東南アジアで同様の傾向にあり、東と東南アジア地域間で大きな差は無いことが示唆された。一方で、国ごとに対象副作用の報告割合のレベルや、個々の副作用名に関しては違いが見られる場合もあることから、有害事象の診断基準、報告制度、リスク管理計画の対象となる副作用などに、国間で違いがある可能性が示唆された。【結論】今回の調査対象薬に関しては、東及び東南アジア内での副作用発現の地域差は大きくは無いことが示唆されたが、さらに国ごとの診断基準や規制の違いに関する調査とともに、重篤例や他の被疑薬群での解析事例を蓄積し、薬効群ごとの副作用の地域差の有無や、その要因についての考察が必要と考えられる。

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