日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_3-C-P-128
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一般演題 ポスター
ジヒドロミリセチンは肝細胞癌由来細胞株HuH-7のSuperoxide dismutase (SOD) 1を増加させる
*小林 司武半 優子太田 有紀木田 圭亮大滝 正訓飯利 太朗松本 直樹
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抄録

【目的】フリーラジカルの過剰産生によって引き起こされる酸化ストレスは、癌を含む多くの慢性疾患の発症に影響する1。また、Superoxide dismutase (SOD)は酸化ストレス応答だけでなく、成長制御、腫瘍抑制及び促進機能に寄与し様々な疾患に関連すると報告されている2, 3。ケンポナシなどの植物に多く含まれるジヒドロミリセチン(DHM)は、フリーラジカル除去作用を持つポリフェノールの一種であり、近年では、肝細胞癌(HCC)を含む様々な癌細胞で抗腫瘍作用の可能性が期待されている4-6。本研究では、DHMと柑橘類に多く含まれる抗酸化作用を示すフラボノイドのヘスペリジン(HSP)のフリーラジカル除去作用の強さを比較検討し、さらに、DHMが肝細胞癌由来細胞株HuH-7のSOD1およびSOD2の発現に与える影響を検討した。

【方法】DHMとHSPのラジカル補足活性は、DPPH法で測定した。DHMとHSPのサンプルは、50%エタノールで0, 0.01, 0.03, 0.1, 0.3, 1, 3, 10 mMで調製した。最終濃度200 μM DPPHと混合し、室温暗所で20分間反応させた。さらに、HuH-7細胞にDHM (0-100μM)を添加し、72時間培養した。SOD1およびSOD2タンパク質発現量は、ウエスタンブロット法で分析した。

【結果と考察】DHM (EC50: 0.24 mM)は、DPPHラジカル補足活性において柑橘系フラボノイドのHSP (EC50: 2.86 mM)に対し約12倍強く、HSPよりも強力な抗酸化作用を示した。さらに、HuH-7のSOD1のタンパク質発現量はDHMの添加により増加した。一方で、SOD2のタンパク質発現量への変化はなかった。DHMは、直接的な抗酸化作用だけでなく、SOD1を誘導し生体内の酵素を介した抗酸化作用も示唆された。しかし、SOD1の減少は抗がん効果にもつながることも報告されており、DHMによる肝細胞癌に対するSOD1の発現量の増加が、抗腫瘍作用にどのような影響を与えるのかは検討中である7

【結論】DHMの抗酸化作用は、高いフリーラジカルの消去能をもつだけでなく、HuH-7のSOD1を増加させ、HCCの腫瘍形成に影響を与えている可能性がある。

【参考文献】

1. Prasad, S et al, 2020, Antioxidants 9: 72.

2. Xu J et al., 2022, Antioxidants. 11: 427.

3. Kim YS et al., 2017, Antioxidants. 6: 86.

4. Li X, Liu J et al., 2016, Molecules. 21: 604.

5. Chen L et al., 2020, J Cancer. 11: 5689-5699.

6. Fan KJ, et al., 2017, Mol Med Rep. 16: 9758-9762.

7. Wang X et al., 2021, Nat Commun. 12: 2259.

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© 2022 日本臨床薬理学会
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