日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-S10-3
会議情報

シンポジウム
心血管疾患におけるPragmatic trial: デザインとハイブリッドDCTとしてのオペレーション
*池原 由美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

理想的な環境下で薬剤の薬効評価を行うEfficacytrialと、通常の診療にできるだけ近い環境の中で、その薬剤をもちいた治療法の効果が、従来の治療法と比較してどの程度患者の予後を改善するかを評価するEffectivenesstrialでは、目的が異なるために試験デザインも異なる。Efficacytrialは薬剤のいわば薬理作用に近いところでの薬効評価を行うために、実際の診療でどの程度の有効性と安全性があるのかに関しては回答ができない。これらに答え得るのがeffectivenesstrialとなるが、そのデザインやオペレーションの現実性からPragmatictrialと分類されることもある。全ての研究が厳密にどちらかに分類されるものではなく、多くは濃淡をもってどちらの傾向をより持つかに分かれてくる。重要なのは、その研究の目的により適したデザインであるのか、またそのためにオペレーションの面から貢献できることは何かを、試験計画に反映していくことである。心血管病領域では多くのefficacytrialやeffectivenesstrialに近い第3相試験でも、高齢者など現実の患者を反映していないこと、長期にわたる観察期間に付随する脱落などの問題、アウトカム設定の点で目的である患者と医療者が行う意思決定、治療法の選択にかならずしも貢献しないことなど多くの問題があり、適切なPragmatictrialの実施についてはPPIの実践も必要になる。 Pragmatictrialは、治験と比べてともすると「何となくゆるい試験」と支援者には軽視されやすいが、その「ゆるさ」こそがPragmatictrialの極めて重要な要素であり、評価のための理想環境で行われるある種コントロールしやすい試験とは異なる難しさがある。純粋なPragmatictrialは、最初の患者が無作為化を拒否した時点でその純粋さを失う、とも言われる。いかに試験のPragmatismを保つか、デザインとオペレーションの視点から考えていきたい。

著者関連情報
© 2023 日本臨床薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top