日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
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第44回日本臨床薬理学会学術総会長挨拶
第44 回日本臨床薬理学会学術総会プログラムアドバイザー
第44回日本臨床薬理学会学術総会長講演
  • 藤尾 慈
    セッションID: 44_3-C-AC
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    約30年前、大学病院での研修を経て、大阪府立成人病センター(現、大阪国際がんセンター)で循環器内科を学ぶ機会を得ました。特発性拡張型心筋症による心不全患者を受け持ち、それを機に、病院に保存されていた生検サンプルの病理標本や電顕写真をみて、心筋細胞に興味を持ち今日にいたっています。

    ヒトを含めて哺乳類の心筋細胞は、生直後に増殖能が著しく低下するため、心臓は再生能が低い臓器です。従って、一生を通して心臓の機能を維持するためには、ストレス/傷害から心臓を守ることが重要と考えられます。心筋保護に関わるシグナルを増強することで、心臓の機能低下を抑制したいと夢見て、研究をしてまいりましたので紹介させていただきます。

特別講演
  • Webb David
    セッションID: 44_1-C-KL
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    Small interfering RNAs (siRNA) have emerged as important new therapeutics thatcan knock down previously undruggable targets in an efficient and long-lastingmanner. Initially exploited for rare diseases, licensing of inclisiran inhypercholesterolemia positions them as viable approaches in common conditions.Zilebesiran is an siRNA that knocks down angiotensinogen (AGT) in the liver, thesole precursor of angiotensin peptides. It has now completed phase I studies.Patients with hypertension were randomly assigned in a 2:1 ratio (n=12/dose) toreceive either a single ascending sc dose of zilebesiran (10, 25, 50, 100, 200,400 or 800mg) or placebo and followed for 24 weeks (Part A). Phase I alsoassessed the effect of 800mg on BP under low- or high-salt diet (Part B), andwhen given with irbesartan (Part C). Endpoints included safety, PK & PD,and change from baseline in ambulatory systolic (SBP) and diastolic BP (DBP)measured over 24-h. Of 107 patients enrolled, 5 had mild, transientinjection-site reactions. There were no significant reports of hypotension,hyperkalemia, or worsened renal function. In Part A, zilebesiran decreased serumAGT dose-dependently. Single doses (≥200 mg) were associated with decreased SBP(>10 mm Hg) and DBP (>5 mm Hg) by week 8. These changes were consistentthroughout the diurnal cycle and sustained at 24 weeks. Results from Parts B andC were consistent with modulation of BP: attenuated by a high-salt diet;augmented by irbesartan. Based on impressive efficacy, and acceptable safety,phase II studies are underway (KARDIA I examines dose and dosing interval;KARDIA 2 explores combination with other agents). Safety data in larger cohorts,with broader co-morbidities are needed, but targeting AGT seems a powerful wayto inhibit the renin-angiotensin system and may have potential beyondhypertension, such as in chronic heart and kidney disease. The long action ofzilebesiran may potentially be beneficial for adherence and BP stability.

  • Cynthia J. (C.J.) Musante
    セッションID: 44_2-C-SL
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
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    In this talk, I will introduce model informed drug discovery, development, andutilization (MIDD), including recent examples, and will discuss the challengesand opportunities that the new era of artificial intelligence and machinelearning (AI/ML) offers to clinical pharmacology and therapeutics. I also willprovide an introduction to the International Society of Pharmacometrics (ISoP)and its role in advancing the science and impact of MIDD. As part of the lattertopic, I will discuss highlights from the two recent joint FDA-ISoP Workshops onquantitative methods in dosage optimization of oncology products.

教育講演
  • 米澤 淳
    セッションID: 44_1-C-EL01
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
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    腎排泄型の薬物や腎機能に影響を与える薬物は、患者の腎機能に応じてその投与量を調節する場合がある。しかし一概に、"腎機能"と言ってもその指標は多様である。臨床試験において様々な指標で腎機能が分類されるために、添付文書においても、患者のクレアチニンクリアランス(Ccr)、Cockcroft-Gaultの式の推定Ccr、推定糸球体濾過速度(eGFR)、体表面積1.73m2あたりのeGFRのどれもが記載されている。また、古くから発売されている薬剤では、現在使用される酵素法ではなくJaffe法(血清クレアチニン値は酵素法で求めた値より約0.2mg/dL高値となる)で測定されたクレアチニン値より算出したCcrで考える場合もある。近年、処方箋への検査値の記載やCKDシールの活用などが進み、院内チームのみならず、診療所や保険薬局等とも連携した地域全体での腎機能に基づく薬物投与マネージメントの取り組みが広げられている。地域チーム医療において腎機能に基づく薬物投与マネージメントを機能させるためには、腎機能の指標について正しく理解し、添付文書を正確に読み解くスキルが必要である。本教育講演では、腎機能の指標について概説し、添付文書を読み解く際の注意点を解説する。

  • 原 賢太郎
    セッションID: 44_1-C-EL02
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    世界的に医薬品の安定供給が脅かされている。医薬品原料等のグローバルサプライチェーンが複雑化する中、原材料の品質保証、生産、在庫管理及び配送方法に関する問題など多様な要因の検証が進められている。加えて我が国では、医薬品製造施設における製造管理及び品質管理上の不備により、高品質の医薬品が恒常的に製造できないことが医薬品の安定供給を阻害する要因のひとつとして顕在化している。これらの課題は、医薬品の迅速かつ安定的な供給のための流通・薬価制度に関する有識者検討会でも議論された。

    医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、医薬品製造施設の監視(品質確保)に係る世界的な取り組みとして、56の当局から構成されるPIC/Sに加盟しており、製造管理及び品質管理に関する基準の国際調和や適切な医薬品製造に関する国際的なガイドラインの制定・改訂を推進している。本講演では、PIC/S活動を通して、医薬品の恒常的な製造や安定供給を支えるための監視体制の強化を目指すPMDAの活動と今後の課題を概説する。

  • 下川 敏雄
    セッションID: 44_1-C-EL03
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    統計科学は,臨床薬理学を含めた多くの分野において必須のスキルである.また,統計解析環境Rに代表される統計ソフトウェアの普及により,多くの研究者が平易な処理で高度な統計的方法が利用できるようになってきている.一方で,様々な場面において,統計解析の誤用が散見される.統計科学に基づいて得られた結果には説得力を伴うものの,誤った解析は科学をあらぬ方向に導く惧れがある.すなわち,適切に統計手法を取捨選択することは,研究者にとって非常に重要である.

    本講演では,仮説検定から出発し,回帰分析までを取り扱う.仮説検定では,その仕組みと手法の取捨選択について解説する.量的変数の場合には,2標本t検定に代表されるパラメトリック検定とWilcoxon検定に代表されるノンパラメトリック検定に関する話題をとり扱う.質的変数の場合には,カイ2乗検定とFisherの正確検定の使い分け,Cochran-Armitage検定などをとり扱う.また,生存時間データでは,Kaplan-Meier曲線の解釈とLogrank検定の意味について解説する.

    回帰分析では,重回帰分析,ロジスティック回帰分析およびCox比例ハザード・モデルについて解説する.そこでは,多重共線性とその診断の方法,および偏回帰係数の解釈などについてとり扱う.また,多変量解析において頻用される変数選択の方法と適用上の留意点について説明する.

  • 古郡 規雄
    セッションID: 44_1-C-EL04
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    精神疾患は社会全体に大きな影響を及ぼしており、疾患の全体的な負担として顕著な位置を占める存在である。これらの疾患に対する対応として、薬物療法は中心的な役割を果たしてきた。

    薬物療法の歴史的背景: 精神薬理学の起源と、その歴史的な進化の中での主要な変革点や発見について考察する。特に、初期の治療法から現代にかけての薬物の変遷とその影響に焦点を当てる。

    主要な薬物クラスの特徴とその進化: 抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、抗不安薬などの主要な薬物クラスについて、その特性、適応、副作用、そして近年の進化に関する詳細な考察を展開する。

    個別化された治療の重要性と実践: 患者の遺伝子情報や生活背景に基づく、個別化された薬物療法の必要性についての考察。そして、これを実際の治療にどのように取り入れているのか、その実践例や研究結果を示す。

    薬物療法の現在の課題と対策: 多剤併用の問題、耐性の発達、長期的な使用に伴う副作用など、現在の薬物療法に存在する課題を取り上げる。また、これらの課題に対する現在の取り組みや研究の進捗についても紹介する。

    未来への展望と期待: 新しい薬物の開発動向、非薬物療法やデジタルヘルス技術との組み合わせによる治療法の可能性、そして患者のQOLの向上に向けた取り組みなど、精神薬物療法がこれからどのように進化していくかの展望を示す。

    結論: 精神科の薬物療法は、様々な変遷を経ながらも、その重要性を維持してきた。しかしながら、薬物療法だけではなく、患者一人ひとりの状態に合わせた多角的なアプローチが今後ますます重要となるであろう。これには、継続的な研究と実践の積み重ねが不可欠であると言える。

  • 小宮山 靖
    セッションID: 44_1-C-EL05
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    ICH E8の改定、これに続くICH E6の改定がICHにおけるGCP Renovationの枠組みにおいて進行中である。いずれも四半世紀ぶりの大改定である。臨床試験/研究データや文書の電子化や、新しい試験デザインに柔軟に対応することはもちろんのこと、従来からGCPの柱の一つであった倫理性をさらに掘り下げた患者中心の考え方が盛り込まれていたり、チェックリスト的なGCPから考えさせるGCPに変容しようとしていたり、臨床試験/研究の質の管理技術を後ろ向きなアプローチから前向きなアプローチに転換させようとしていたり、ICHから見れば外部の利害関係者であるアカデミアや患者団体がガイドライン作成段階から関われるようにしたり、大改定にふさわしいさまざまな意図が盛り込まれたり、取り組みが行われている。本講演が焦点を当てるのは、「臨床試験/研究の質の管理技術を後ろ向きなアプローチから前向きなアプローチに転換させようとして」いる部分である。現行のGCPであるICH E6(R2)でも、リスクの特定やリスクに対する業務プロセスへの事前の質の作りこみが推奨されているが、GCP Renovationにおいて重要なことは、新たに導入されたCritical-to-Quality Factor(CTQ要因)という概念とその運用である。CTQ要因に対する理解がなければ、E6(R2)からE6(R3)への変化も実感できないであろう。本講演では、CTQ要因とは何なのかを解説するとともに、それによって質の管理技術がどのように"整理し直されるのか"についても論じたい。

  • 米満 吉和
    セッションID: 44_2-C-EL06
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    2014年11月に医薬品医療機器等法(改正薬事法)が施行、再生医療等製品を対象として条件及び期限付製造販売承認制度(いわゆる早期承認制度)が導入された。これは患者にとって画期的治療技術へのアクセスのハードルを下げるための規制緩和として期待され、更に遺伝子治療・細胞治療(法的区分においては再生医療等製品)の開発を手掛けるスタートアップは、これまで小規模な臨床試験だけで早くから販売に到達可能となることを期待して来た。その後9年が経過し複数の製品が早期承認されたものの、その売上高は限定的であり、各社の収益に貢献しているとは言い難い。結局のところ、(1)有効性が「推定されている(確定されていない)」に留まっている再生医療等製品について、医療現場が積極的に使用する動機になりにくい、(2)早期承認レベルのデータで、特に欧米で承認を受けることは概ね不可能である、などの理由が想定される。そのため、最近では製薬企業を中心に、「一定規模の比較試験で明確な有効性を証明し、医療現場で使ってもらう素地を固めることが、結局は一番近道ではないか」という主張も聞かれるようになって来た。以上のように、現在早期承認制度については、議論を残したまま過渡期に入っている。一方で一定規模の比較試験を組むことに困難が伴う場合、つまり自家細胞の加工を要する製品や、遺伝性疾患などの極希少疾患を対象とする製品の場合、早期承認制度は依然として重要な制度である。これらはまさに遺伝子治療・再生医療にあてはまる場合が多いが、ではそのような場合にはどのようなデータを以て「有効性を推定」することが可能になるだろうか?本講演では、我が国における以上の経緯を整理した上で、2017年に米国FDAで制定されたRMAT指定制度、そしてそのドラフトガイドラインの記載内容と我が国での実例との比較をすることにより、早期承認制度のあるべき姿について議論したい。

  • 横田 崇
    セッションID: 44_2-C-EL07
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    個人情報保護法が令和2年、令和3年に立て続けに改正となった。令和2年改正は平成27年改正法により設けられた「いわゆる3年ごとの見直し」規定に基づく初の改正であり、仮名加工情報の創設や越境データの制限規定などといった社会情勢の変化に伴う多岐に渡る改正が行われた。また、令和3年改正により官民の個人情報保護制度の一元化がはかられ、課題とされていた「いわゆる2,000個問題」が解消されるとともに、学術研究分野における規律の見直しが行われることとなった。

    これら矢継ぎ早に行われた個人情報保護法の改正は、医学・医療の分野にも大きな影響を与えている。昨年春には、学術研究機関等に該当しない医療機関において、診療情報を2次利用する研究実施が一時困難になるといった大きな混乱も発生した。また、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(生命・医学系指針)」は個人情報保護法を受けてさらに複雑に入り組んだ内容となり、研究に携わる関係者にとって非常に分かりにくく、研究しづらい状況に陥っているように見受けられる。

    本講演では、個人情報保護法と医学研究の関係を確認しながら、医学研究関係者が陥りやすい誤解を紹介する。また、それらを踏まえ、個人情報保護法と生命・医学系指針において、診療情報を研究に利活用するために知っておくべき基本的ルールについて解説する。

  • 浅野 健人
    セッションID: 44_2-C-EL08-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    【背景・目的】

    当院感染制御部では宿泊療養所に入所する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を対象にして、洗口液の有効性と安全性を検討する特定臨床研究を行った。宿泊療養所での実施においては、複数の医師等が頻回の訪問をして、研究参加のインフォームドコンセントを受けることやデータ収集を行うことは物理的な距離の問題や感染対策の観点からも難しいことから、オンラインによるeConsentやeSourceを実装し、医師が訪問することなくデータ収集を行う環境を実現した。また、付随してアンケートを行い、研究対象者にとってのDCT(Decentralaized Clinical Trial)はどのような体験であったのかを調査した。今回の発表では、どのようにDCTの仕組みを構築したか、研究対象者にはDCTがどのようなものであったか等を報告すると共に今後計画しているDCTについても言及したい。

    【方法・結果】

    国内で開発されたDCT支援システムを用いて、eConsentとして動画、説明文書を用いて、電子署名が行えるように構築した。また、研究計画書で特定されたデータをeSourceとして収集できるように構築した。また、本臨床研究のプロセスを検討して、宿泊療養所での動きも想定しながら、研究対象者の病院への来院を前提にした場合と比較して、予めどのようなところで相違が生じるのかを検討したうえで、マニュアルや各種資料等の整備を行った。2か月余りの期間で95例の登録を行うことが出来、円滑に試験を終了することが出来た。また、アンケート調査においては、研究対象者48名から回答を得ることが出来た。うち、41名(85.4%)からはDCTにまた参加してみたいという回答であった。

    【考察等】

    eConsentやeSourceの導入により、遠隔でデータ収集を行うことが可能であることがわかった。病院での来院を前提にした場合と比較して、プロセスそのものが変わり、データ収集のプロセスにオペレーショナルデータの収集を意識する必要があることもわかった。データ収集の手段がシンプルなデザインの臨床試験においては、DCTを実装することで、症例リクルートの幅・選択肢が広がり、早く効率よく臨床試験を実施できる可能性がある。研究対象者においても、DCTに参加するという体験に関して、大きな不満はなく、再び参加したいと思っていた。

    また、現在、当院では新たな大規模DCTを計画しており、その取り組みの最新の状況についても可能な範囲で報告する。

  • 長嶋 浩貴
    セッションID: 44_2-C-EL08-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    DCTはもはや議論のステージではなく実践のステージにある。DCTはWeb3時代の分散型アプローチであり、本来は全体最適化を目指すべきものである。しかしながら現状は、実践の経験値の共有が十分ではないことが個別最適化の枠を出るハードルになっている。未来型DCTの実践においては「アンラーニング」が重要である。すなわち、学びから得た価値観を認識したうえで取捨選択しつつこれまでの学びを修正していくことがDCT実践の本質である。私たちはクリニックにおいてスモールスケールを生かした「アジャイル」な「ジャズ型」組織を構築し、「アンラーニング」を目指してにDCTを実践してきた。本セッションでは、医療機関(アカデミア)、製薬企業、CRO、医療機関(クリニック)という異なる立場の異なる経験値を共有することで、未来型臨床試験のスタンダードとしてのDCTの全体最適化を図るための議論を深めたい。

  • 宇田川 俊一
    セッションID: 44_2-C-EL08-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    中外製薬株式会社では組織横断的なプロジェクト体制でDCT導入の検討・実装を進めている。実装を進める中で、社内フローや試験デザイン等に起因する内部要因、及び各ステークホルダーとの連携や規制要件等に起因する外部要因により、実装可能な試験及び範囲が限定されるという課題にも直面した。実装した試験においては、社内外のステークホルダーと大小様々な議論・協議を重ねて実装に至っている。本講演では、DCT導入の糸口や理解向上の一助となることを期待し、製薬企業の立場からDCT導入課題・解決に向けたアプローチ、国内外におけるfull DCTやhybrid DCT実例、今後の展望について紹介する。

  • 小澤 秀志
    セッションID: 44_2-C-EL08-4
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    Decentralized Clinical Trial (DCT)は臨床試験・治験における新たな手法としてCovid-19の流行を機に大きな注目を浴びてきた。Post-コロナ時代においてはDCTの手法を適切に臨床試験に導入することが効果的かつ効率的な実施につながると言われ、日本のドラッグラグ・ドラッグロスを防ぐためのツールとして近年の大きなトレンドになっており、規制当局、医療機関、製薬関連企業のそれぞれの立場で導入に向けた議論が活発に行われている。

    DCT導入におけるグローバルの視点においては、日本のみならず各国・各地域で課題があり、それぞれの状況に応じて実装が模索されている状況にある。DCTの普及に積極的なアメリカにおいては、コロナ渦におけるFull Remote DCTから対面診療を織り交ぜたHybrid DCTのアプローチが主流になりつつあり、導入の目的として「患者主体のアプローチ」及び「症例登録期間の短縮」に加え、「多様性への適応」の色合いも濃くなってきた一方、本質的なグローバル展開には至っていない。

    本講演では、DCTの世界的な普及推進を目的としてアメリカで発足したNPO法人であるDecentralized Trials & Research Alliance(DTRA)の活動を通じて得られた各国及び各企業における取り組みの動向と、それらに基づいて日本でどのように取り組みを推進していくべきか、課題も含めて共有する。

  • 榎本 紀之
    セッションID: 44_2-C-EL09
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    薬剤性肺障害、特に薬剤性間質性肺疾患 (drug-induced interstitial lung disease: DI-ILD) は生命予後に大きく関与する重篤な副作用であり、新薬の開発と共に年々増加の一途を辿っている。特に日本人は欧米人や他のアジア人と比較し、重篤なDI-ILDの合併頻度が高く、本症の発症に遺伝的素因の関与が推定されている。薬剤の内訳は、抗悪性腫瘍薬や関節リウマチ治療薬が多く、死亡率の高いEGFR-TKIや、近年では免疫チェックポイント阻害剤 (ICI) によるDI-ILDが注目を集めている。DI-ILD合併のリスク因子として、1) 既存のILD、2) 高齢、3) 喫煙歴、4) 放射線治療、5) 全身状態の悪化 などが挙げられる。この中で最も重要な因子は既存のILDであるため、薬剤投与前には、高解像度CT画像 (HRCT) によるスクリーニングが重要となる。DI-ILD合併後のHRCTパターンは、器質化肺炎 (OP) パターンや非特異性間質性肺炎 (NSIP) パターン、過敏性肺炎 (HP) パターン、びまん性肺胞障害 (DAD) パターンなど多様であるが、最も予後不良とされるのはDADパターンである。重篤なDI-ILDを回避するため、特に投与開始初期には短期間でのモニタリングを繰り返し、胸部の聴診および胸部レントゲンやCT、血清KL-6・SP-D・LDH等を総合的に判断し、DI-ILDの早期発見、早期の薬剤中止が肝要である。しかし一方で、mTOR阻害剤やICIでは、無症状かつ軽微な肺野病変のみの場合 (Grade 1) 、厳重な観察のもとに治療を継続することが可能である。以前と比較してDI-ILDの頻度は圧倒的に増加したものの、薬剤の効果と副作用のバランスを考慮した包括的医療を提供することも実臨床では求められている。上記の様に、薬剤の副作用と向き合うために必要な知識と要点について概説する。

  • 勝谷 友宏
    セッションID: 44_3-C-EL10
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    アルツハイマー病に代表される認知症は脳神経内科医が診る稀な疾患ではなく、高血圧症のように日常臨床で毎日接する当たり前の疾病となっている。生活習慣病のような一般的な疾病に比べ認知症の発症・進展が社会に大きな影響を及ぼす理由は、本人のみならず介護者も含めた周囲への影響が著しく大きいためである。特にアルツハイマー型認知症では、本人の病識が乏しく、物盗られ妄想などが頻発するため、介護者の心身の負担が大きいだけでなく、介護のための離職や収入の減少などにつながるケースも少なくない。本講演では、認知機能低下をきたす疾病を鑑別するためのポイントについて、わかりやすく概説するとともに、それぞれの疾病の発症機序や病理学的特徴などにも触れてみたい。その上で、治療薬の選択、薬の使い分け、使用上の注意点などについて、開業医の視点でリアルワールドにおいて私自身がどのように薬剤選択を行い、投与量を加減しているかなどもご紹介申し上げるととに、アルツハイマー病治療の新薬も含めた最新知見などについても触れてみたい。一方で、非薬物治療にどのようなものがあるか、認知症カフェや若年性アルツハイマー病への取り組みなど、私が開業している尼崎市における取り組みなどを披露したい。そして最後に、難治性進行性神経難病であるアルツハイマー病患者を看取るために必要な社会基盤整備、すなわち地域包括ケア、全世代的医療、ACPなど国や自治体が何を考えて取り組んでいるのか、私自身が地域社会の中で多職種と連携しながら行なっている活動の内容なども紹介し、認知症を社会全体で見守る仕組みを皆さんと一緒に考える場としたい。

  • 山岸 義晃
    セッションID: 44_3-C-EL11
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    トランスレーショナルリサーチとは、広義には、基礎研究の成果を、人に直接のベネフィットをもたらす研究をいう。特に、医学・生物学領域において、しばしば Bench to Bedsideと表され、基礎的な研究で得られた技術シーズを、疾病の治療や診断に用いる医薬品や医療機器等として実用化することを指す。近年、トランスレーショナルリサーチの成果として様々な医薬品が実用化され、大きなブレークスルーを与えている。新型コロナウィルスのパンデミックにおいて、驚異的な速さで開発されたmRNAワクチンはその代表的な一例であろう。

    ベンチで示された生物学的なメカニズムを医薬品として実用化するには様々な困難が伴う。特に基礎研究で示された薬効について予備段階の臨床試験で確認する試験、いわゆるProof of Concept試験に至る期間は、しばしばtranslational gapと言われる。Translational Gapは、研究開発費用が調達困難であることが原因の一因といわれ、我が国でもその対策として、AMED橋渡し事業をはじめとした研究開発費用の支援の整備が行われている。しかしながら、超えるべきGapは資金だけなのだろうか?

    BenchからBedsideの移行に従い、研究推進に必要な観点は増大する。普段、基礎研究者が重要性を認識していないポイントが開発で課題になることは少なくない。translational Gapを超えるにあたっては、薬効についての臨床薬理学的な理解のみならず、安全性のリスクや、医薬品の物としての性状・製造、疾病の実臨床における治療体系、薬事規制、医薬品メーカーの販売方針などに帰因する基礎と臨床のGapを十分に理解した上で、基礎研究の段階でどのようなデータを蓄積していくか十分戦略をねる必要がある。

    今回の発表では、典型的なトランスレーショナルリサーチの流れを概説するとともに、translationl Gapの前で足踏みするプロジェクトでしばしば見受けられるポイントについて例示したい。

    本報告の中で示すシーズ支援はAMED橋渡し研究プログラム・異分野融合型研究開発推進支援事業(JP19lm0203007、JP19lm0203014、JP20lm0203007、JP20lm0203014、JP21lm0203007、JP21lm0203014、JP22ym0126809、JP22ym0126815、JP23ym0126815、JP23ym0126809)の支援を受け手行われている。

文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞記念講演
  • 水野 知行
    セッションID: 44_3-C-MEXT
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    小児 (特に新生児・乳児) の生理機能は成長と発達の影響を受け複雑で、成人と大きく異なります1)。また、成長・発達過程は非線形であり、小児を単純に小さい成人と捉えることはできません。一方で、小児の薬物治療は、臨床試験の実施が様々な制約から困難なため、やむをえず成人から得た情報に基づいている場合が多く、その安全性、有効性の確立が重要な課題とされています2)。Model-Informed Precision Dosing (MIPD)は、数理モデルを用いた薬物動態および効果・副作用の予測・シミュレーション、すなわちPharmacometricsの研究技術を活用して薬物治療の個別・最適化を目指すものであり、小児薬物治療への応用が積極的に進められています3)。本講演では、米国オハイオ州のシンシナティ小児病院における小児薬物治療のアウトカムの改善を目指したMIPDの研究・臨床実装に関する取り組みおよび今後の展望を、実例を交えて紹介します。また、米国におけるMIPDを取り巻く最近の動向についても紹介します。 参考文献 1. Kearns G et al. N Engl J Med. 2003 Sep 18;349(12):1157-67. 2. Wiles et al. J Pediatr. 2013 Jan;162(1):12-5. 3. Mizuno T et al. Br J Clin Pharmacol. 2022 Feb;88(4):1418-1426.

シンポジウム
  • 八木 伸高
    セッションID: 44_1-C-S01-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    患者・市民には臨床試験の計画や実施状況のみならず、結果についても知る権利があると考えられる。しかし臨床試験結果へ患者・市民がアクセスすることは未だ難しく、治験参加者であっても自らが参加した試験の結果にアクセスできないことがある。一般社団法人ピー・ピー・アイ・ジャパン(PPI JAPAN)では2022年6月、本邦での臨床試験のLay Summary(レイサマリー)の理解・普及のための取り組みを始め、本年10月13日、本邦初のレイサマリーに関するガイド「レイサマリー作成の手引き」を作成、公開した。

    欧州では、欧州連合臨床試験規則(EU CTR)536/2014(2022年1月)により、第1相から第4相までの全ての臨床試験の結果を一般市民が知ることができるようレイサマリーの提供が必須となった。Good Lay Summary Practice(GLSP)は、臨床試験のスポンサーに対し、市民が公平に臨床試験情報へアクセスできるよう、臨床試験情報システム(CTIS)を通じたレイサマリーの提供を義務付けている。臨床試験のスポンサーは、レイサマリーを臨床試験の終了から12か月以内(小児を対象とする試験では6か月以内)に提出する。GLSPは10の必須項目を規定し、一般に年齢12歳以上の市民が読めるものとすることやインフォグラフィックス(視覚的表現)の活用を推奨している。レイサマリーをどのように作成するか臨床試験の計画段階から考慮することや患者・患者家族など当事者の視点を反映(当事者と共創)することの重要性を明確にしている。

    本邦では、レイサマリーに関する検討はようやく始まったばかりである。厚生労働省から発出された通知「治験に係る情報提供の取り扱いについて」(薬生監麻発0124第1号 2023年1月24日)では、企業の治験専用ウェブサイトにて臨床研究など提出・公開システム(jRCT)に登録されている情報を公開すること、その際に平易な表現を用いることも可能とされ、患者・市民へのレイサマリーの公開が徐々に進むことも期待される。

    「レイサマリー作成の手引き」は、日本におけるレイサマリーの作成・活用を進め、様々な立場の人々へのメリットや価値につながると考えられる。本講演では、「レイサマリー作成の手引き」の示すレイサマリーの意義、要件、作成・公開のプロセスを概観するとともに、手引き公開後に得た様々な立場からのフィードバックを踏まえた今後の展望を論じる。

  • 木村 綾
    セッションID: 44_1-C-S01-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
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    日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は、成人固形がんを中心とした16の疾患領域別研究グループを持つ日本最大の多施設臨床研究グループである。その中にある中央支援機構では、登録中:約50試験、追跡中:約40試験、準備中:約15試験の支援を担っている。

    近年、研究の立案段階から患者・市民が参画する試み(Patient and Public Involvement:PPI)が進展している。JCOGでは2018年に患者参画小委員会を発足し、いち早く活動を開始した。JCOGではセミナーと臓器別研究グループの意見交換会を通じて、臨床研究に造詣の深い患者市民を増やし、患者市民の意見を取り入れて患者のニーズに合致した研究を行うようにすることをPPIの目標としている。具体的な活動としてセミナーとグループ毎の意見交換会を定期的に開催している。その活動をより活性化することを目指して患者参画小委員会に一般を代表する4名の外部委員を迎えた。

    また、患者参画ポリシーを策定しInvolvementに加えてEngagementにも着手した。Engagementは「研究終了後に研究者が結果の情報や知識を社会と共有すること」と定義され、学会発表、広報、プレスリリースが主に当てはまる。JCOGでは、Emanuelらの研究倫理8要件中の「候補者を含む被験者の尊重」で謳われている「研究参加者に対する研究結果の説明」を含めて「Patient and Public Engagement(PPE)」と定義し推進することとした。その取り組みの一つとして、研究の主たる解析結果の発表時に研究参加者向けの結果の説明「Lay summary」の作成を開始した。主として研究参加者への試験結果の説明を行うことを目的とし、研究事務局を通じて各参加施設の担当医より直接説明を行うとともに、JCOGウェブサイトに公開している。これまで公開中のLay summaryは3試験であり、今後も公開を続けていく。

  • 桜井 なおみ
    セッションID: 44_1-C-S01-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
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    私ががんに罹患して間もないとき、介入試験ではないが、医師主導治験に参加をする機会を得た。同意説明文書に基づいて除外条件などの確認があったのちに、参加に際しての約束事、自身にとってのメリット、デメリットのほか、この研究に参加をすることで、未来の患者にも結果が還元されることが述べられた。私の結果は還元されたが、「私たちの結果」、つまり、この研究に参加をした人の全体傾向、エンドポイントがどうなったのかは、あとで偶然みた論文で知ることとなった。このとき、「未来の患者のために」と説明をされながら、その「未来に自分がどう貢献できたかが還元されない」ことに、とても違和感を覚えた。

    昨今では、臨床試験のデザインや同意説明文書のレビューなどに、患者や家族が参画をし、体験に基づいた意見や提案を述べる「患者・市民参画(PPI:Patient and Public Involvement)」という概念が我が国においても広がってきている。きっかけとなったのは、2019年3月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development:以下、AMEDと称す)が「患者・市民参画(PPI)ガイドブック」を発行したことによる。本ガイドブックでは、PPIの定義を「医学研究・臨床試験プロセスの一環として、研究者が患者・市民の知見を参考にすること(※患者・市民:患者、家族、元患者(サバイバー)、未来の患者を想定している)」とし、臨床研究に焦点をあてたPPIを推進している。

    研究へのPPI導入のきっかけとなった出来事として、1990年代に起きたHIV・エイズをめぐる患者、市民などの人権擁護、消費者運動がある。この中で展開されたスローガンのひとつに「Nothing about us, without us(私たち抜きに、私たちのことを決めないで)」という言葉がある。これ以降、欧米では、臨床研究の透明性の確保、質の向上や医療の安全性の確保などを目的として、患者の声を創薬段階から、評価、市販後管理にいたるプロセスの中に取り入れていこうという仕組みが生まれている。

    レイサマリーもこうした「透明性」確保の一環としての役割が期待されている。わたし自身、いくつかのレイサマリー作成に関与したことがあり、本セッションではそうした私の被験者としての経験、そして、患者支援者のひとりとして、このレイサマリーに期待することを述べたい。

  • Lee M. Nagao
    セッションID: 44_1-C-S02-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    The International Consortium for Innovation and Quality in Pharmaceutical Development (the "IQ Consortium") is a not-for-profit organization of pharmaceutical companies with the mission of advancing science and technology to augment the capability of member companies to develop transformational solutions that benefit patients, regulators and the broader research and development community. The IQ Consortium consists of several workstreams, including the Clinical Pharmacology Leadership Group (CPLG). The CPLG is dedicated to addressing emerging scientific and regulatory issues in clinical pharmacology. The CPLG accomplishes its work through collaborative knowledge and data sharing, much of which is done through its subject specific working groups. The CPLG and its working groups conduct surveys, can share data through targeted, secure database framework, conduct workshops and webinars, present at international conferences, publish in peer-reviewed journals, and hold discussions with regulatory agencies around the world, including the FDA, the PMDA, and the NMPA/CDE. We will present an overview and update of IQ and the current CPLG portfolio of activities.

  • Islam Rasem Younis
    セッションID: 44_1-C-S02-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    Enrollment of healthy control group in pharmacokinetics studies in participants with organ (renal or hepatic) impairment, can raise ethical and practical issues. Repetitive evaluations of pharmacokinetic (PK) in healthy participants may not be warranted when the PK profile of the drug is adequately characterized. Moreover, the enrollment of healthy control group can be time-consuming, especially when attempting to match study participants with organ impairment by demographics and other physiological characteristics. In this presentation, the International Consortium for Innovation and Quality (IQ) Clinical Pharmacology Organ Impairment will present the results of a retrospective analysis which evaluated the feasibility of utilizing virtual population to replace matching healthy control group in organ impairment studies. The presentation will also discuss pros and cons for the different methods used to replace matching healthy control group in organ impairment studies. Finally, the challenges, opportunities, and future steps for implementing the virtual population approach in organ impairment studies will be discussed.

  • Vaishali Sahasrabudhe
    セッションID: 44_1-C-S02-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    Chronic kidney disease is a progressive condition that affects >10% of the general population worldwide. Glomerular filtration rate (GFR) is accepted as the best surrogate for kidney function and is estimated using mathematical models that rely on measurement of endogenous markers such as creatinine and cystatin C. From a clinical pharmacology perspective, renal impairment can lead to changes in drug exposure and, therefore, accurate determination of GFR is important for robust characterization of the relationship between kidney function and drug pharmacokinetics. In this presentation, the International Consortium for Innovation and Quality (IQ) Clinical Pharmacology (CP) Organ Impairment Working Group will highlight important advancements in models used to estimate GFR and their utilization in clinical pharmacology. Common factors encountered in clinical trials or real-world settings that impact serum creatinine measurement and thus the ability to accurately estimate GFR will be presented. Additionally, the recommendations of the IQ CP Organ Impairment Working Group for GFR assessment during drug development and for deriving dosing recommendations in subjects with kidney disease will be shared.

  • Liu Jing
    セッションID: 44_1-C-S02-4
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    In this presentation, the International Consortium for Innovation and Quality (IQ) Clinical Pharmacology Pediatric Workgroup (CPLG-PWG) will be introduced. The continuous challenges in pediatric drug development and approval, and the evolving global regulations on pediatric drug development will be presented. IQ CPLG-PWG's perspective on when, what and how to plan for an efficient pediatric program will be discussed, with special focus on clinical pharmacology applications. Published examples of using exposure matching and biomarker for pediatric extrapolation, natural history/external control/single-arm study in rare diseases, combined adolescent and adult trials and the use of RWE in innovative and efficient pediatric drug development, as well as Clinical Pharmacology's role in age-appropriate pediatric formulation will also be presented.

  • 川口 崇
    セッションID: 44_1-C-S03-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome: PRO)は、本邦でもその用語の普及、認識が高まっている。改訂に向けて作業が進んでいるICH E6(R3)には、PROやePROという用語が登場しており、米国FDAのPatient-Focused Drug DevelopmentのGuidance 4でも扱われており、臨床研究に関わる上ではその理解は必須のものになりつつある。臨床アウトカム評価(Clinical Outcome Assessment: COA)は、PRO以外にも臨床家評価アウトカム(Clinician-Reported Outcme: ClinRO)、観察者評価アウトカム(Observer-Reported Outcome: ObsRO)、パフォーマンスアウトカム(Performance Outcome: PerfO)に分類される。これらの中でもPROは先行してその方法論が整備されてきたもので、今後、ClinROなど他のCOAも同様に議論が拡大しているところである。

    PROは研究以外でも日常診療での活用が期待されており、徐々に広まりつつある側面もある。しかし、PROの情報の多くは海外のもので日本語による情報は少なく、難解な方法論の部分は特に情報が多くはない。特に電磁的にPROを取得するelectronic PRO(ePRO)が同時に普及されているが、紙媒体のPROからePROへのMigrationについても長くされてきた議論が軽視されている状況も散見される。敷居を高くしすぎず、しかしながら平易に落とし込みすぎずに普及させていくことを議論する段階はそこまできているかもしれない。

    2020年度より、臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業の「関連学会の取組と連携したPRO ガイドラインの作成」班(研究代表者:立命館大学 下妻 晃二郎先生)では、本邦において長くアウトカム研究をされてきた研究者を中心に、「臨床試験のためのPatient-Reported Outcome(PRO)使用ガイダンス」を作成した。総論パートではガイダンスの背景と目的を、各論パートではPRO/ePROに関して、研究者にとって有用な情報を広く取り扱っている。特に臨床でPROを活用する医療者にとっても、PROについて広く学べる内容であり、特に尺度の使用許諾などの側面は研究・日常診療に問わず重要となってくる。

    本セッションでは、この「臨床試験のためのPatient-Reported Outcome(PRO)使用ガイダンス」を紹介・解説する。

  • 矢嶋 宣幸
    セッションID: 44_1-C-S03-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    膠原病疾患は、比較的若い年齢にて罹患し、長期に疾患に向き合わねばならない。今回対象としたSLEは全身の炎症疾患であり,皮膚、関節、血球、腎臓を主な臓器障害とした慢性炎症性疾患である。高い再燃率、および、長期間にわたりステロイドや免疫抑制剤投与による感染症、骨粗鬆症などの副作用、が問題とされている。患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome: PRO)は患者の視点から評価をしたものであり、連続的な症状の変化が可能である。今回、連続的なPROをスマートフォンアプリを利用して取得し、継続率や症状の推移に計測した。今回、5施設(昭和大学病院 / 京都府立医科大学附属病院 / 岡山大学病院 / 東京共済病院 / 長崎大学病院)から200名のSLE患者を対象とした。計測に先立ち、SLE患者用のPROCTCAEを開発した。候補項目を、既存の疾患分類基準、疾患特異的QOL指標から抽出し、パネル会議を経て54項目(規定項目42項目、追加項目12項目)をSLE版PROCTCAEとした。そのPROCTCAEを2週間ごと3ヶ月間の連続でデータ収集を行った。我が国の膠原病領域のPRO-CTCAE評価を含むePROはまだ我が国ではまだまだ重要視されていないため、本研究が活性化につながる可能性がある。医療者が普段意識していなかった症状に気づく可能性があるなど、通常診療への利活用も将来的に考えられる。

  • 関根 祐介
    セッションID: 44_1-C-S03-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    抗HIV療法は、多剤併用療法(Highly active antiretoroviral therapy:ART)により、治療効果が向上し死亡が著しく減少したが、長期服用が必要で、有害事象、合併症、健康関連QOL(Health-related quality of life:HRQoL)などの問題がある。その解決法として、患者報告アウトカム(Patient Reported Outcomes:PRO)が注目されている。PROは患者自身が有効性・安全性・有用性を評価し、HRQoLや自覚症状、機能状態、満足度などを測定することができる。欧州医薬品庁・米国食品医薬品局では、新薬の評価にPROを使用することを推奨しており、近年の臨床試験の評価項目にPROを用いている。ビクテグラビル/テノホビルアラフェナミド/エムトリシタビン配合錠の臨床試験(1489/1490試験)では、HIV症状インデックス(HIV-Symptom Index:HIV-SI)、ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index:PSQI)が、カボテグラビル+リルピビリ注射剤の臨床試験(ATLAS試験)では、HIV治療満足度質問票(HIV Treatment Satisfaction Questionnaire-Status version:HIVTSQ)を用いている。また、PROを用いた臨床研究も注目され、我々も取り組んでいる。初回ART開始時の葛藤を検討した研究では、意思決定の葛藤尺度(Decisional Conflict Scale:DCS)を用いた。ART開始時は、高い葛藤状態にあり、服薬支援は葛藤を軽減できる可能性があった。葛藤を軽減することの有用性を検討するため、HIV陽性者(初回ART)のアドヒアランス、DCS、HRQoL,の調査(DEARS-J研究)では、アドヒアランス(Visual Analogue Scale:VAS)、HRQoL(The Medical Outcomes Study HIV Health Survey:MOS-HIV) 、DCSを用いた。48週までのアドヒアランスは高い水準でARTによりHRQoLは改善する傾向であったが、倦怠感など改善がみられないかった。ART開始時に高い葛藤を抱えている場合、HRQoLが低い傾向が。現在実施中の、ARTの症状関連有害事象の研究(PROSPECT 研究)では、有害事象(Patient-Reported Outcomes version of the Common Terminology Criteria for Adverse Events:PRO-CTCAE)、意思決定の後悔(Decision Regret Scale:DRS)、アドヒアランス(VAS)、 HIVTSQ、DCSを用いた。抗HIV療法は新たなステージをむかえ、PROを用いて治療効果・有害事象のみならず満足度やHRQoLへの貢献することが求められている。

  • 黒澤 彩子
    セッションID: 44_1-C-S03-4
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    【背景と目的】進行期がんに対する薬物療法において、有効性とともに有害事象による体調悪化の予防が重要である。有害事象の把握において、医療者評価と患者評価には乖離があることが報告されている。外来薬物療法患者におけるBring Your Own Device(BYOD)を用いた電子患者報告アウトカム(ePRO)による症状モニタリングを行い、早期介入が望ましいと思われる症状報告が行われた場合の院内フローの確立を図るため、単施設の前方視的介入研究を行った。【方法】当院腫瘍内科にて外来薬物療法を受ける成人患者で、本人もしくは同居家族がスマートフォン・タブレットを所有する症例を対象とした。有害事象評価としてPRO-CTCAEを用いた。ePROアプリとして3H P-Guardianを用い、登録作業を薬剤師、看護師、担当医が支援した。PRO-CTCAEは当院における実現可能性調査(癌と化学療法2022年)で報告頻度の高かった(>50%)項目と、既報(Baschら)を参照して28項目を選択し、水曜日(±1日)を起点として7日に1回の回答とした。早期介入が望ましいと思われる9症状(食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、呼吸困難、疼痛、不眠症、疲労、うつ)についてGrade3以上の回答があった場合、研究者の登録メールアドレスにアラートが報告され、多職種による情報共有のうえ、電話による状態確認等の介入を行った。【結果】2021年9月に倫理審査委員会による承認を受け、症例登録を開始、抄録作成時点(2023年8月)で77例が登録された。男性49例(64%)、年齢中央値68歳(29-85)、がん種は多いものから大腸がん13例、すい臓がん13例、胃がん9例、リンパ腫7例、乳がん6例。病期はStageIVが64例(86%)を占め、治療レジメンは細胞障害性薬剤59例(77%)、分子標的薬単剤7例、免疫療法単剤10例、両者併用1例。のべ回答ポイント1651回中、回答率は55%。アラート対象9症状におけるのべ8190回答中のアラート158回(2%:多いものから疼痛46回、下痢30回、疲労26回)。アラート対応についても概要を報告する。【考察】外来薬物療法患者におけるBYODを用いたePROによる有害事象モニタリングと、アラートをきっかけとした介入を行う単施設の前方視的研究を行った。多職種が協力することで説明同意から症例登録、アラート確認と介入までスムーズな診療が行われた。今後はアラート以外のePRO情報の活用と入力率向上、また参加割合向上に向けた取り組みが課題と考えている。

  • 山口 拓洋
    セッションID: 44_1-C-S03-5
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
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    これまでご紹介いただいた臨床研究の実例を踏まえ、今後のPRO研究の将来像と課題について私見を述べたい。

  • 富樫 庸介
    セッションID: 44_1-C-S04-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    免疫系ががん細胞を非自己として認識し排除できるのではないか?というのが腫瘍免疫の考え方の根本である。その命題に対して近年の研究により、「がん免疫編集(Cancer immunoediting)」という理論が提唱され、現在のがん免疫療法が有効なことの理論的な根拠になっている。即ち、発生してくるがんと免疫との間に、がん細胞が非自己として排除される「排除相」、がんは完全に排除されていないものの急速に成長もしない「平衡相」、平衡相の間に蓄積した様々な異常により、がんが免疫系から逃避し、臨床的な「がん」となる「逃避相」、の3つのフェーズが存在するという考え方である。様々な免疫細胞の中でも、抗腫瘍免疫応答には獲得免疫の主役であるT細胞、特に細胞傷害性T細胞が重要であるとされている。免疫系が自己に対して暴走しないように、様々な抑制するシステムも備わっているが、T細胞も様々な機序で制御されている。その一つとしてPD-1やCTLA-4といった免疫チェックポイント分子が存在しており、慢性的な抗原刺激によりT細胞がこのような分子によって抑制されて機能不全になった状態を疲弊状態と呼び、免疫チェックポイント阻害薬はこのような疲弊T細胞を再活性化して効果を発揮している。「がん免疫編集」に当てはめると逃避メカニズムの一端として免疫チェックポイント分子がT細胞を抑制していて免疫チェックポイント阻害薬は逃避機構を解除して、平衡相(もしくは排除相まで?)逆戻ししている治療と言える。

    T細胞の中には自己の正常細胞を攻撃したしまうものも存在し、そのようなT細胞も免疫チェックポイント分子で機能が抑制されている場合がある。したがって免疫チェックポイント阻害薬は自己である正常細胞を攻撃するT細胞を活性化する場合もあり、このような場合に自己免疫性疾患のような副作用(irAE)が出現してしまう。irAEは様々な臓器で出現し非常に多彩であるが、免疫応答が確かに起きている証拠でもあり、irAEが出現する場合には治療効果も高いと言われている。

    免疫チェックポイント阻害薬はあくまでT細胞を活性化して効果を発揮しているため、T細胞を詳細に解析することが本態解明や新規治療開発に重要とされており、我々もそのような研究に取り組んでいる。

  • 室 圭
    セッションID: 44_1-C-S04-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    近年、消化管癌に対してICIを用いた多数の有望な臨床試験結果が報告され、標準治療が大きく塗り替わりつつある。

    食道癌:ATTRACTION(AT)-3(ニボルマブ (Nivo) vs. 化学療法)、KEYNOTE(KN)-181(ペムブロリズマブ (Pembro) vs. 化学療法)からICI単剤が転移性食道癌の二次治療の、さらに、KN-590から化学療法(5-FU+シスプラチン)+Pembro併用療法、CheckMate(CM)-648から5-FU+シスプラチン+Nivo併用療法、ならびにNivo+イピリムマブ (Ipi)併用療法が、転移性食道癌一次治療の標準治療として確立された。CM-577では、食道癌の術前化学放射線療法後に根治切除術を行い、術後Nivo療法がプラセボに対する無病生存期間の有意な延長を示し、周術期治療での標準治療となった。

    胃癌:AT-2(Nivo vs. プラセボ)から、Nivo単剤が転移性胃癌の三次治療以降の標準治療となった。さらに、AT-4やCM-649から、化学療法(CapeOX, FOLFOX, SOX)+Nivo併用療法が一次治療の標準治療として確立された。HER2陽性胃癌に対する一次化学療法にトラスツズマブとPembro併用療法の試験(KN-811)が行われ、奏効割合の有意な向上、全体集団の無増悪生存期間とCPS1以上集団における全生存期間の有意な延長が認められた。日本での承認が期待される。KN-164, 158から、マイクロサテライト不安定性 (MSI-H) 固形癌の、二次治療以降におけるPembro単剤の有効性が証明され、化学療法既治療の大腸癌、胃癌を含むMSI-H固形癌に対してPembro単剤が標準治療となった。2023年ESMOでは、MSI-H胃癌の一次治療に対するNivoと低用量Ipi併用療法のWJOG医師主導治験(NO LIMIT)の高い有効性の結果が報告された。周術期における化学療法+ICIは複数試験が行われ、AT-5、KN-585ではprimary endpointを達成出来なかったが、MATTERHORNではFLOT+デュルバルマブ群の病理学的完全奏効の有意な向上が得られ、今後primary endpointであるevent-free survivalの結果が待たれる。

    MSI-H大腸癌:先述した既治療例でのPembro単剤に加えて、Nivo単剤、Nivo+Ipiが承認されている。一次治療ではKN-177(Pembro vs. 標準的化学療法)から、MSI-H大腸癌の一次治療としてPembro単剤が標準治療として確立した。ICIは消化管癌の治療体系を大きく変革した。今後は、各種併用療法の開発、バイオマーカーのエビデンス構築が期待される。

  • 工藤 正俊
    セッションID: 44_1-C-S04-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    現在日本で承認されている肝細胞癌に対する免疫チェック阻害剤はアテゾリズマブ+ベバシズマブ、デュルバルマブ+トレメリムマブ、デュルバルマブ単剤の3レジメンである。最近の大きな流れとして肝細胞癌は全てのステージにおいて局所治療と全身薬物療法のSequence/Combination/Harmonizationが重要となってきたことである。最近アジュバント試験においてIMbrave050試験が成功し、アテゾリズマブ+ベバシズマブがハザード比0.72(p=0.012)で無再発生存期間を有意に延長したことが2023年4月の米国癌学会(AACR)で発表された(QinS, Kudo M, et al. Lancet,2023)。これまで多くのアジュバント試験が失敗した中で世界で初めての成功であり、歴史的な快挙である。このことによりEarlystage(BCLC-A)からIntermediate stage(BCLC-B)、advancedstage(BCLC-C)まで幅広く薬物療法と局所治療・切除とのコンビネーションもしくはsequential治療が重要な役割を果たすようになってきた。言い換えると薬物療法は全てのステージの肝細胞癌において患者にbenefitを与えるということである。Intermediatestageでは日本で行われたPhase II試験のREPLACEMENT試験においてアテゾリズマブ+ベバシズマブがup-to-sevenoutのIntermediate stage肝癌に有効であることが示された。さら多施設の概念検証試験(Proof-ofconcept試験)によりアテゾリズマブ+ベバシズマブ導入後の切除、ラジオ波、TACEによるcurative conversionによりclinicalCRおよびdrug freeが20~30%程度に得られることが示され、薬物療法と局所治療との組み合わせがIntermediatestageでは非常に重要であることが示された。さらにadvanced stageにおいても米国とアジアで行われたphaseIb/II試験であるMORPHEUS試験においてアテゾリズマブ+ベバシズマブ+tiragolumab(抗TIGIT抗体)の組み合わせが奏効率42.5%(RECISTv.1.1)および55.0%(modified RECIST)と極めて良好なレスポンスを示し、phaseIII試験IMbrave152が開始されることになっている。また最近の傾向としてレスポンスの高い薬剤が登場してきたことによりresponderがSDやPD症例よりも長期生存が得られることが明らかとなってきた。したがって、高い奏効を得るということはより多くの患者さんがより長く生存するということを意味している。

  • 尾田 一貴
    セッションID: 44_1-C-S05-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    抗菌薬はグリコペプチド系薬、アミノグリコシド系薬、アゾール系抗真菌薬においてtherapeutic drug monitoring(TDM)が推奨されている。TDMでは血中濃度を測定し、目標濃度を指標に投与量の最適化が行われるが、血中濃度測定値そのものに加えて、測定値を活かす場合にはソフトウェアが有用である。例えば、血中濃度-時間曲線下面積(area under the concentration time curve:AUC)のベイジアン予測による推定、半減期の推定による中毒域からの休薬期間・投与再開時期の設定、非線形薬物動態における濃度-時間曲線のプロット、など様々である。演者は病院薬剤師としての目線を持って、病院薬剤師が使いやすいTDMソフトウェアを追求し、マイクロソフト社のエクセルをプラットフォームとする「BMs-Pod」を開発するに至った。そもそもは薬物毎に異なるソフトウェア使用方法習得の煩雑さに対し、一つのソフトウェアで様々な薬物の解析を兼ね備えることを求めた。さらに機能を拡張してきており、例えば血中濃度測定値を必要とせず必要なPK/PD目標値の達成率を推定するモンテカルロシミュレーションの機能や、母集団薬物動態モデルのユーザーによる調整・追加などを可能とした。ゆえにBMs-Podは、母集団薬物動態モデルや血中濃度測定値が持つ情報を臨床において薬剤師が最大限に活用するために、汎用性が高い統合的TDM解析ソフトウェアであると考える。

     演者は、BMs-Podによる様々な薬物におけるシミュレーションの実施を基に得られた情報を、臨床において最大限に活用してきた。本講演ではそれらを紹介しつつ、統合的TDM解析ソフトのさらなる発展について考えてみたい。

  • 島本 裕子
    セッションID: 44_1-C-S05-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    抗不整脈薬は強力な薬理作用を有する反面、重篤な副作用もあり安全域が狭い。このため、抗不整脈薬の領域では薬物の体内動態とその抗不整脈効果に関する検討に基づき、薬物血中濃度モニタリング(TDM)が治療に応用されてきた。

    抗不整脈薬のひとつであるアミオダロンは臨床薬理学的に非常に興味深い薬物体内動態を示す。脂溶性が高く脂肪組織に分布し、消失半減期は非常に長く(14ー107日)、代謝物であるデスエチルアミオダロンはアミオダロンと同等の薬理活性を有する。そのため、アミオダロンのTDMの際にはアミオダロンとともに活性代謝物デスエチルアミオダロンの血中濃度も併せて考慮する必要があり、両者の合算値によって評価が行われるが、その一方で両者の比率が体内におけるアミオダロン薬物動態の状況を知りうる有益な情報となりうることはあまり知られていない。

    また腎排泄型薬物であるシベンゾリン、ピルシカイニドは添付文書に記載される標準投与量では高齢者や腎機能障害患者には過剰投与となる可能性が非常に高い。血中濃度が高濃度となり、中毒を発症する症例も散見されているが、添付文書上での明確な減量基準がないため、TDMによる用量調節が必須である。しかしながら抗菌薬や免疫抑制薬と比較し、抗不整脈薬のTDMの実施率は低いことが課題として挙げられる。

    本シンポジウムでは臨床における実際の抗不整脈薬のTDMの実施例を紹介し、TDMを行うことによる抗不整脈薬薬物療法の適正化、とりわけ安全性の確保について議論したいと考えている。

  • 猪川 和朗
    セッションID: 44_1-C-S05-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    薬局薬剤師が薬局や患者居宅等にて簡便かつ低侵襲な自己採取法により得た微量検体を用いて、薬効の指標値を測定・解析することにより、患者の薬物治療を評価・適正に管理することができる。この治療薬物モニタリング(TDM)により、従来の患者を観察し聴取した情報に加えて、客観的なデータを得ることができるため、服薬アドヒアランスの確認、薬物濃度が有効濃度域内であることの確認、患者への服薬説明、処方監査や、医師へのフィードバックにつながる。ただし、薬局や患者居宅にて指先自己穿刺で採取された血液の遠心分離後、血漿検体を分取し、凍結後に輸送する方法(血漿法)をとっていた。この方法では、器具が揃いにくい環境やそれらを扱える者がいない環境への対応に改善の余地があった。そこで、TDM実施時に全血を直接ろ紙カードに滴下するdried blood spot(DBS)法の導入を検討した。DBS法は常温下、普通郵便での送付が可能という利点もある。

     抗てんかん薬の場合、バルプロ酸(VPA)服用患者に対するDBS法の臨床応用性を検討した。使用全血は指先自己穿刺自己採取により得た。全血15 μLをWhatman FTA DMPK-Aカードに滴下し、室温乾燥後、ろ紙を直径3 mmパンチでくり抜き、メタノールで抽出した。抽出溶媒を遠心エバボレーターで除去後、誘導体化した。最終試料1 μLをgas chromatograph-mass spectrometer(GC-MS)に注入し濃度測定した。VPA服用中の患者に説明し同意を得たのち、薬局または患者居宅にてDBS全血検体と血漿検体の両方を採取し、全血中と血漿中の濃度を比較した。DBS法による全血中VPA濃度と別途測定した血漿中VPA濃度との間には相関がみられ、全血中濃度の方が低い傾向にあった。また、カルバマゼピン(CBZ)においても同様に、患者で実践したことで、薬局・患者居宅におけるDBS法の臨床適用可能性が示され、全血中CBZ濃度と血漿中CBZ濃度との間には相関が認められた。

     今後も検討・検証を重ねていくことで、全血中薬物濃度に基づいた薬物治療の評価・適正管理が可能になると考えられる。従来の血漿法に加えて、器具や医療スタッフが揃わない環境下においてDBS法を導入し、両者をうまく活用することで、より有用なTDMを実践できると期待される。

  • 加藤 隆児
    セッションID: 44_1-C-S05-4
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
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    アセトアミノフェン(APAP)誘発肝障害(AILI)の発症機序は、APAPの反応性代謝物であるNAPQIが直接肝細胞を障害することで発症することが知られており、用量依存性の中毒性機序が提唱されている。本発症機序は主にAPAPの過剰投与時のものであり、過剰投与が少ない本邦においてはアレルギー反応が関与する特異体質性の機序で起こることが示唆されている。AILIの治療としては、服用8時間以内であればN-アセチルシステインの投与が行われるが、その効果は十分でないことが報告されており、AILIの有効な予測法が求められている。演者らは、現在までにラットおよびヒト肝臓および単球由来細胞株を用いた検討により、NAPQIが中毒性および特異体質性の発症機序に関与することを明らかにしてきた。そのため、NAPQIの血中濃度測定およびそのモニタリングがAILI発症の予測に繋がると考えられるが、NAPQIは反応性代謝物であり、安定した測定を行うことが困難なことから臨床応用は難しいと考えられた。そこで、AILI発症を予測する別の指標の探索を行った。UGT1A1欠損ラットを用いた場合にAILIの発症が増加するとの論文報告があったことから、ラットを用いて血中グルクロン酸抱合体(AP-G)濃度とALTとの相関性について検討を行った。しかし、血中グルクロン酸抱合体の個体間変動が大きくALTとの相関性は認められなかった。AP-G/APAP濃度比率と検討を行ったところ、比率が低下する場合にALT上昇の可能性が示唆された。続いてヒト肝細胞を用いて検討を行ったところ、培養液中AP-G/APAP濃度比率が低下すると細胞生存率が低下し、NAPQIの生成に関与するCYP2E1をノックダウンさせると、細胞生存率およびAP-G/APAP濃度比率の上昇が認められ、AILIの予測に血液中AP-G/APAP濃度比率測定が有用である可能性が示唆された。実際に、APAP服用患者で血液中AP-G/APAP濃度比率を測定したところ、その比率が低下している患者でALTの上昇が認められる症例を経験した。

     本シンポジウムでは、TDMによるアセトアミノフェン誘発肝障害発症予測の可能性について考えると共に、反応性代謝物が原因となる重篤副作用のモニタリングにTDMが有効か否かを考えたい。

  • 安西 尚彦
    セッションID: 44_1-C-S06-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
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    臨床実習の診療参加型化を促し、卒前教育がより良い医師の育成に向け充実することにつながることを目指し、いわゆるStudent Doctorを法的に位置づける「共用試験の公的化」が、令和5年4月1日より施行された。臨床実習に参加する学生の適性と質を保証し、患者の安全とプライバシー保護 に十分配慮した上で、診療参加型臨床実習を更に促進するための基盤である医学教育モデル・コア・カリキュラムも令和4年度に改訂版が公開され、変化し続ける未来の社会や地域を見据え、多様な場や人をつなぎ、活躍できる医療人の養成を目指すというその意義は以前にも増して大きくなっている。上記の環境下で、臨床薬理学・薬理学が担うべき役割を今一度考えた際に、思い出されるのはGoodman & Gillman's 12th Ed, "Preface"に記載されている「医学生にとっては、薬理学的知識が、医学の実地修練に生かされない限り意味がない」の一文であり、医学部においては「薬を正しく使える医師の育成」がそれではないかと考える。そのためには「効果的で安全な薬物治療を実施できる医療人」育成という視点で、医療機関に所属する職種である医・歯・薬・看の共通薬理学教育の実現と、Robins Basic Pathology, 8th Ed "Introduction"に記載されている「病気の原因と病態形成を明らかにすることは、病気を理解するために不可欠なだけでなく、合理的な治療法を開発するための基礎でもある」の言葉の通り、薬理病理学者"Pharmaco-pathologist"の育成が究極の目標ではないかと考える。

  • 筒井 健夫
    セッションID: 44_1-C-S06-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    歯学教育モデル・コア・カリキュラム令和4年度改訂版には、歯科医師として求められる基本的な資質・能力として、多職種連携能力が掲げられている。内容は、患者中心の歯科医療を提供するために、医療、福祉、介護及び患者に関わる全ての人々の役割を理解し、お互いに対等な関係性を築きながら、チームとして協働していくとされている。

    24大学の歯学部薬理学を担当する教員に、多職種連携・チーム医療・地域医療の教育の取り組みについてアンケートを行い、20大学より回答された。アンケートでは、1)歯学教育モデル・コア・カリキュラムの多職種連携、チーム医療、地域医療の実施で薬理学の講義や実習が含まれるか、2)含まれる場合の実施項目と内容、3)薬理学の講義や実習が含まれない場合、他の科目が行っているか、4)他の科目が行っている場合の実施項目と内容、5)歯科医師として求められる基本的な資質・能力としての多職種連携能力について、薬理学の立場からどのような学生教育を進めていくことが必要であるか、を質問した。

    アンケートの結果は、1)について、2大学より薬理学が含まれる、または予定していると回答された。2)についての内容は、多職種連携において注意すべき薬物と薬理作用等の講義であった。3)について、17大学より臨床科目など他の科目が行っていると回答された。4)の回答について特色のある実施内容として、医学部、歯学部、保健医療学部の「学部横断型PBL」、他大学との合同PBL、災害時教育などが回答された。5)について教育に必要な事項として、医療体系全般のなかでのチーム医療を考える、医学系で使用される薬物を含め、薬理学の基本的な知識から問題解決のための思考をもつ、薬を中心とした多職種の繋がりや重要性を理解する、互いの連携からポリファーマシーを防ぐなどが回答された。また、課題としては、講義時間の制限(講義コマ数不足)や、試験問題形式が多肢選択式では暗記に頼る学習となり理解へは繋がらない、などが回答された。

    本アンケートの結果に基づいて、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、歯科衛生士および他の医療従事者との連携のなかで、それぞれの患者さんの状態に応じて用いられる薬物療法を学ぶ教育を薬理学の立場から進めていくには何が必要かについて、皆さんと共に考えたい。

  • 田中 紫茉子, 内田 信也, 黄倉 崇
    セッションID: 44_1-C-S06-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
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    薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)では、「薬物治療の実践的能力」を培うことを重要な目的と定め、患者個々の状況に対応した薬物治療について学修することを主眼としている。そのためには、病態と医薬品の作用メカニズムの関連性、医薬品の有効性・安全性の適切な評価、医薬品・患者情報の重要性と必要性の理解、すなわち臨床薬理学の学修プログラムが必須である。

    静岡県立大学及び帝京大学薬学部では、臨床薬理学教育を通じた実践的能力を持つ薬剤師育成を目指し、実症例に基づいた数々のアクティブラーニングを実施している。

    一部を挙げると、静岡県立大学の低学年から6年次にかけて開講される「臨床薬学演習」では、実症例に基づいた代表的疾患患者の治療計画を少人数グループによる問題基盤型学習(PBL)-チュートリアル形式で討論、発表を行う。本講義を通じて病態と薬物の作用メカニズムを関連付けた系統的な理解、ガイドライン等による標準化された治療方針を学ぶと共に、医薬品情報の活用、薬物の有効性・安全性の基本的な評価に必要な能力を醸成している。4年次の「実務事前実習」では、適切な用法・用量・剤形の選択と調剤の基礎を修得すると共に、医療面接、フィジカルアセスメント実習を通じて、患者の病態把握及び根拠に基づいた薬物療法に必要な能力を培っている。TDM実習では、患者検体を模した血液サンプルを定量し、得られた血中濃度及び症例情報を基にした血中濃度シミュレーション、薬物動態パラメータ算出及びそれらに基づいた投与計画を行う。これにより、患者個々の薬物療法に必要な薬物動態の理論の理解、適切な用法・用量を選択できる実践的能力を培っている。

    帝京大学薬学部2年及び4年次に開講される「製剤学」「薬物動態制御学」では、症例及び製剤見本を活用した演習を行い、薬物動態に関する薬物相互作用等の基本原理を理解させ、処方の妥当性評価のみならず、薬効評価、副作用の発見等に結び付ける総合的な能力を醸成している。

    さらに両施設の研究室配属後の卒業研究では、臨床現場におけるクリニカルクエスチョンを研究として構造化し、臨床薬理学の発展に繋がる科学的根拠の創生を行っている。

    このように本発表では、薬学部における臨床薬理学・薬理学教育の実践例をご紹介すると共に、次世代の薬剤師教育への展望について皆様と議論させて頂きたい。

  • 柳田 俊彦, 平原 康寿, 池田 龍二
    セッションID: 44_1-C-S06-4
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
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    看護師養成は、医学・歯学・薬学と異なり複雑である。4年制大学だけではなく、専門学校や短大においても資格取得が可能である。その教育は、「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」に則って行われており、2019年の第5次指定規則改正を受けて、2022年度から改正カリキュラムでの教育がスタートしている。4年制大学における学士教育に関しては、『看護学教育モデル・コア・カリキュラム』が、2017年策定に策定されており、現在のカリキュラムは、『看護学教育モデル・コア・カリキュラム』に準拠した初めてのカリキュラムである。

    看護における臨床薬理学教育は、看護職の専門化・多様化・高度化に伴い、より一層重視されてきており、専門看護師教育、認定看護師教育、さらには特定行為に係る看護行為の研修においても、臨床薬理学の知識や実践能力が必須となっている。その一方で、看護における臨床薬理学教育の担当者は、その殆どが外部講師の医師や薬剤師という立場であるため、看護学教育における薬理学教育の位置付け、将来、看護師の立場で薬物治療に何が必要とされるか、そのために、どのような教育をなすべきかが見えにくくなっている。

    適切かつ有効な薬物治療には、医師-薬剤師-看護師の連携が必須であり、看護師の立場から積極的に薬物治療に参画してもらうことが重要である。本シンポジウムでは、看護の特性を考慮した「看護に向けた臨床薬理学教育」について紹介したい。

  • 宮田 大資, 高田 龍平
    セッションID: 44_1-C-S07-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
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    尿酸はヒトにおけるプリン体の最終代謝産物であり、その生体内における恒常性は、キサンチン酸化還元酵素(XOR)による合成と、主に腎臓や小腸を介した体外への排泄のバランスにより維持されている。高尿酸血症は、尿酸の合成亢進や排泄低下が原因となることで、血清尿酸値が7 mg/dLを超えた状態と定義され、痛風をはじめとする種々の疾患と関連することから尿酸降下薬による治療の対象となる。尿酸降下薬は、XORの阻害により尿酸の合成を阻害する尿酸合成抑制薬と、尿からの尿酸の再吸収を阻害することで尿中への尿酸排泄を促す尿酸排泄促進薬に分類される。尿酸合成抑制薬としては、アロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタットの3剤が承認されており、臨床的に広く用いられている。一方、尿酸排泄促進薬としては、古くからブコローム、プロベネシド、ベンズブロマロンが承認されていたのに加え、2020年には、尿からの尿酸再吸収を主に担う分子実体であるUrate transporter 1を選択的に阻害することが報告されるドチヌラドが上市され、治療薬の選択が広がっている。いずれの薬剤も、主要な薬効標的やoff-targetの阻害に基づく薬物相互作用や副作用などの注意点が知られることから、本講演では各薬剤の特徴について概説する。

  • 明石 直之
    セッションID: 44_1-C-S07-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    高尿酸血症の定義は、日本痛風・尿酸核酸学会の発行した『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』において、血清尿酸値が7.0 mg/dLを超えるものとされている。このカットオフ値は、ヒトの血液中では尿酸結合蛋白の存在により尿酸が7.0 mg/dLまでは過飽和状態とならずに存在できることが由来となっているが、一方で臨床研究における高尿酸血症の定義は、元々血清尿酸値が女性の方が低いことを考慮して男女で異なった血清尿酸値のカットオフ値を設定したり、尿酸降下薬内服を高尿酸血症の定義に加えたりと、各研究によって様々である。しかし、高尿酸血症の定義に違いはあるものの、これまでの心不全、虚血性心疾患等の心血管疾患を対象とした観察研究では、高尿酸血症が予後規定因子となることが数多く報告されている。さらに、血清尿酸値が高い症例群においては将来的な心筋梗塞、心不全、心房細動を始めとする心血管疾患の新規発症率も高くなることが報告されている。このような観察研究の結果から、高尿酸血症は心血管疾患のリスクマーカーであることは明らかであるが、高尿酸血症に対する尿酸降下薬を用いた介入研究において、尿酸降下薬が心血管イベントを抑制するという一貫した結果は得られていない。最近では、2022年にLancet誌に報告されたALL-HEART試験が記憶に新しい。本研究では、痛風既往のない60歳以上の虚血性心疾患患者を対象に、アロプリノール使用の有無で臨床予後に差が出るか調査が行われた。合計5721人が登録され、中央値4.8年の追跡がなされた。結果は、アロプリノール内服群では通常ケア群と比較して血清尿酸値が大幅に低下したが、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管死の複合主要エンドポイントは両群で有意な差を認めなかった。しかし、本研究では痛風症例が含まれていなかったこと、治療前の血清尿酸値が0.34 mmol/L (5.7 mg/dL)と低い症例を対象としていたこと、また治療介入群では57%が内服中断していたことなどの問題があり、解釈に注意が必要である。高尿酸血症は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病等の心血管疾患の危険因子を合併することが多く、高尿酸血症への介入試験を行う際に交絡因子の調整が非常に難しいことも結果の解釈を難しくする要因である。本発表では、これまでの高尿酸血症に関する観察研究と介入研究を振り返り、心血管合併症予防を見据えた高尿酸血症治療について考えてみたい。

  • 丸橋 達也, 東 幸仁
    セッションID: 44_1-C-S07-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
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    血清尿酸値は、高血圧や慢性腎臓病、メタボリック症候群などが存在することにより上昇する。したがって、血清尿酸値は、心血管疾患発症の有用なリスクマーカーと考えられている。一方で、高尿酸血症自体が心血管疾患発症の独立した危険因子かどうかについては、まだ一定の見解が得らえていない。基礎研究により、高尿酸血症が血管障害・動脈硬化を惹起するいくつかの機序が想定されている。一つは、キサンチン酸化還元酵素が触媒する反応により尿酸と同時に、活性酸素が生成されることで血管が障害される機序である。もう一つは、尿酸トランスポーターを介して、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞に尿酸が取り込まれ、血管障害が惹起される機序である。したがって、キサンチン酸化還元酵素阻害薬や尿酸トランスポータ-阻害薬による高尿酸血症治療は、血清尿酸値を下げるだけでなく、動脈硬化を抑制して心血管疾患発症を抑制する可能性がある。本講演では、尿酸降下薬による最近の介入試験を紹介しながら、高尿酸血症治療の動脈硬化に対する効果について概説させていただく。

  • 藏城 雅文
    セッションID: 44_1-C-S07-4
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    生活習慣病患者では高尿酸血症の合併を高頻度に認めるが、血清尿酸値は将来の生活習慣病の発症を予測し、尿酸降下薬(尿酸生成抑制薬、尿酸排泄促進薬)が生活習慣病を改善させることが示唆されている。<尿酸生成抑制薬> 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版において、腎障害を有する高尿酸血症患者に対して、尿酸降下薬は非投薬に比して推奨できるか?(CQ2)についてシステマティックレビュー・メタ解析が施行されている。基本的に尿酸生成抑制薬による解析結果となったが、腎機能低下・末期腎不全の抑制を認め、腎機能低下を抑制する目的に尿酸降下薬を用いることが条件つきで推奨されている。また、アロプリノール投与による血圧への影響を調査したメタ解析では、収縮期血圧・拡張期血圧が有意に低下することが示されている。<尿酸排泄促進薬>ベンズブロマロン(非選択的尿酸再吸収阻害薬)は、近位尿細管に発現しているURAT1を阻害することで尿酸再吸収を抑制し血清尿酸値を低下させる。痛風患者あるいは心不全患者における小数例の検討ではあるが、ベンズブロマロンは、アディポネクチンの増加、炎症の改善、インスリン抵抗性を改善させるが報告されている。さらに、ドチヌラド(選択的尿酸再吸収阻害薬)においても、動物モデルではあるが、耐糖能/インスリン抵抗性が改善することが示された。URAT1は近位尿細管だけでなく脂肪細胞においても発現していることが知られており、脂肪細胞に取り込まれた尿酸はNADPHオキシダーゼを活性化させ活性酸素を増加させることが明らかとなっている。尿酸排泄促進薬(URAT1抑制薬)は、尿酸値を低下させることに加えて、脂肪組織内における尿酸濃度を低下させることで活性酸素産生を低下させ、上述の作用が引き起こされたのではと考えられている。 心血管合併症の危険因子である生活習慣病の視点で、尿酸降下薬をどのように用いるのかについてさらなる検討が必要である。

  • 福島 靖正
    セッションID: 44_1-C-S08-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    静かなるパンデミックといわれる薬剤耐性(AMR)対策については、2015年5月のWHO総会において「薬剤耐性(AMR)に関するグローバル・アクション・プラン」が採択され、我が国でも、2016年4月に開催された「国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議」において、「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2016-2020)」が策定され、AMR対策について政府一体となった取組が進められてきた。同プランは、新型コロナウイルス感染症のまん延の影響により、計画期間が2022年度末まで延長され、本年4月に、更なるAMR対策の推進にあたって、今後5年間で実施すべき事項をまとめた新たな「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023-2027)」が策定された。

    AMR対策において、研究開発及び創薬は大きな柱の一つであり、これまで、薬剤耐性菌バンク(JARBB)の整備、ヒト・動物・環境由来のゲノムデータベースの拡充、医療経済的評価や抗微生物薬の適正使用に関する臨床・疫学研究の推進などに加えて、日本医療研究開発機構(AMED)の「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」及び「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)」といった、いわゆるプッシュ型インセンティブにより、研究開発及び創薬を促進してきた。今後は、さらに国際共同治験の促進を含め、治験環境の整備を進めていく必要がある。

    一方、新規抗菌薬が継続的に上市されるためには、製薬企業が継続的に研究開発を進めることが必要であるが、他方、新規開発が成功し上市されたとしても、不適正な使用が増えれば、耐性微生物が増加してしまう。そうならないためには適正使用が必要だが、同時に市場規模は限定され、抗菌薬開発は製薬企業にとって魅力的でなくなる。上市後の利益予見可能性を高めることが製薬企業の研究開発への動機付けに有効であり、そのための市場インセンティブ(いわゆる、「プル型インセンティブ」)の導入が求められている。米国、英国、スウェーデンなどでは、市場インセンティブが試験的に導入又は検討されつつある。我が国においても、抗菌薬の研究開発を促進する市場インセンティブを実現するための「抗菌薬確保支援事業」を今年度より開始しており、検討会における議論を踏まえ、11月7日に初めて対象企業の選定を行った。今後も、この取り組みを継続していくことが求められる。

  • 細萱 直希
    セッションID: 44_1-C-S08-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    抗菌薬開発の歴史は、耐性菌との闘いの歴史でもある。1928年にアレクサンダー・フレミングがペニシリンを発見して以降、非常に多くの優れた抗菌薬が開発され、感染症は克服されたと思われた時代もあった。しかし、ペニシリン発見の間もなくペニシリン耐性ブドウ球菌が出現しており、現在ではカルバペネム耐性腸内細菌科細菌や多剤耐性アシネトバクター属菌等の出現や蔓延は、サイレントパンデミックとして世界的な問題として注目され、WHOは耐性菌に対する世界的な取り組みの必要性を提起している。これらに対し、更なる新薬の開発が求められているが、新薬開発には莫大なコストがかかり、また抗菌薬は高血圧、糖尿病等の慢性疾患に比べて、使用頻度は高くても投与期間が短く、企業にとって開発に係るリスクベネフィットの合わないものであることから、多くの製薬企業は抗菌薬の開発から撤退し、新しい抗菌薬はほとんど上市されない状況に陥っている。

    耐性菌に対しては、耐性菌サーベイランス、院内感染対策・制御、抗菌薬適正使用が極めて重要な手段であるが、新規抗菌薬の開発も欠かすことができない。新規抗菌薬開発の必要性については、日本感染症学会や日本化学療法学会を含む複数の学会が繰り返し合同で提言を出しており、先進7か国首脳声明においても新しい抗微生物薬開発を推奨するインセンティブの議論がなされている。日本においても、抗菌薬による治療環境の維持、国際保健に関する議論で主導的な役割を果たすため市場インセンティブの方向性について検討するための事業が進められている。

    長崎大学病院では、過去10年間(2013年~2022年)に33件の感染症薬に対する治験に参加しており、顕著な減少傾向はないものの、抗菌薬の治験は明らかに減少している。疾患としては、呼吸器内科が多くの治験に参加しているため呼吸器感染症が中心となっているが、近年は市中肺炎や慢性呼吸器感染症から耐性菌感染症、真菌感染症、ウイルス感染症にシフトしており、耐性菌発生頻度の低さや治験施設と主な診療施設との乖離等から治験の難易度も上がっている。新規抗菌薬開発のためには、我々臨床医としても現場でできることを検討し、臨床試験の効率化を図ってなければならない。今回は、医師の立場からこれまでの治験の経験を振り返り、課題を抽出し、皆様とともに共有することで、対策について検討してみたい。

  • 小橋川 智美
    セッションID: 44_1-C-S08-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
    会議録・要旨集 フリー

    抗菌薬の治験は、急性疾患である感染症が対象となるため、慢性疾患対象の治験と比べて、緊急的な治験開始となる。治験の説明・同意取得、スクリーニング検査、適格性確認、治験薬投与開始までを、時間的猶予なく同日(数時間)で進めなければならない。

    1.治験開始時の被験者の負担が大きい

    市中肺炎の場合、特に軽~中等症では大学病院を受診する患者は少なく、候補患者は他施設からの紹介となることが多い。患者は、すぐに治療を開始して欲しいところ、具合が悪い中、初めての大学病院で初見の医師・CRCから治験の説明を受け、同意後は適格性確認のための検査が続き、不安や身体的負担が大きい。そのため、当院では、医師および検査部・看護部・薬剤部等への対応を複数のCRCで分担し、急な治験開始でも、患者の自由意思を尊重し、可能な限り早く進められるよう工夫している。

    2.看護師や検査技師への負担が大きい

    適格性確認が遅くなり、治験薬投与開始がすでに時間外になることも多い。治験薬投与開始後、許容時間内の頻回な血中濃度採血、検体処理などが、人員が減る夜間の時間帯となり、看護師、検査技師への負担も大きい。

    3.時間外の治験薬の管理

    当院では、治験薬の払い出しは、原則、平日時間内であるが、抗菌薬の治験では、時間外払い出しや土日対応も必要となる。注射薬の連日投与では、毎日のIWRS後の払い出し、検査値による投与量変更、非盲検薬剤師の治験薬調製など、土日の医師、CRCおよび薬剤師の対応調整を行っている。

    4.複数診療科が関わることによる複雑さ

    複雑性尿路感染症、敗血症などが対象の場合、どの診療科の患者も候補になり得る。そのため、複数診療科から分担医師を選定し、急な治験開始に備えて複数の病棟看護師に説明をして連携体制を構築する必要がある。また、各種トレーニングやdelegation logの取得人数が増えるため、対応が煩雑となる。

    5.課題への今後の展望

    地域医療情報システムを介した他施設での前治療歴確認や検査結果の利用は、治験開始時の患者の負担軽減や治験実施への効率化が期待できる。スタッフが安全に治験手順を実施できる人員数や治験への理解は、急な治験開始でも治験を円滑に進めるためにも必要不可欠である。また、治験薬管理および治験手順の簡便な取り扱いが望まれる。

    今回は、抗菌薬の治験の特徴、治験実施時の問題点および当院での取り組みをご紹介するとともに、より良い工夫について議論したい。

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