日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_2-C-O09-1
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一般演題(口演)
大腿骨骨折患者の服用薬剤の検討:3年間の推移
*原田 和博橋詰 博行
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抄録

【目的】高齢化が進み、転倒、骨折に関連するとされているポリファーマシーやベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZ薬)などに注意が必要である。大腿骨骨折患者の服用薬剤および背景要因を調査し、3年間の推移を比較検討した。【方法】2022年以降に当院に大腿骨近位部骨折で搬送された患者連続100名(頚部、転子部各々51、49名)の服用薬剤(臨時薬は除く)および患者背景を調査し、2019年のデータ(前調査)と比較した。【結果・考察】年齢は86.8±8.9(平均±標準偏差、範囲:51~102)歳、男女は各々16、84名、BMIは20.3±2.8、認知症「あり」が66名で、前調査と同様であった(各々86.0±6.9歳、15/85名、20.2±3.4、61名)。転倒に関わる合併症は、脳血管障害11名、パーキンソン病5名、脊椎疾患5名、関節リウマチ4名、心不全4名、腎不全・透析3名などであった。服用薬剤数は平均5.8剤、6剤以上は51名(前調査は各々6.1剤、54名)で、合併症により薬剤数は増加した(腎不全9.7剤、関節リウマチ8.0剤、心不全8.0剤、パーキンソン7.6剤など)。中枢神経作動薬(認知症治療薬を除く)が処方されていた患者は37名で、睡眠薬は、転倒リスクとされるBZ薬20名(ブロチゾラム9名、ゾルピデム3名、ゾピクロン3名など)、BZ薬以外の睡眠薬15名(レンボレキサント8名、トラゾドン7名、ラメルテオン4名、スボレキサント2名)で、抗パ薬5名、抗精神病薬4名、抗てんかん薬3名、プレガバリン2名であった。前調査ではBZ薬18名、他の睡眠薬9名で、一般実臨床でBZ薬の処方が減少する中(当院のブロチゾラム処方は3年間で47%減少)、今回BZ薬以外の睡眠剤の増加がみられたもののBZ薬がむしろ増加しており、BZ薬の骨折への関与の可能性とさらなる啓蒙の必要性を示していると思われた。他は消化器系薬68名(便秘40名、胃酸抑制37名など)、降圧薬62名、骨粗鬆症30名、脂質異常症27名、認知症23名、抗血小板薬22名、鎮痛薬21名などであった。【結論】大腿骨骨折には、超高齢、女性、低体重、認知症が大きく関与し、半数で6剤以上のポリファーマシーであることが、前調査と同様に再確認された。BZ薬は2割の患者で処方され、3年前に比し減少はなく、骨折リスクの高い患者へのさらなる注意、啓蒙が必要であると考えられた。

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