主催: 日本臨床薬理学会
目的: 手術不能の悪性褐色細胞腫の特異的治療としてCyclophosphamide、Vincristine、Dacarbadine (CVD)化学療法やβ線放出医薬品であるI-131 meta-iodo-benzyl-guanidine (I-131 MIBG)内照射療法が行われているものの、その有効性は十分とは言えない。福島県立医科大学では、大型サイクロトロンを使用しα線放出核種であるAt-211を製造し、At-211を標識した低分子化合物であるmeta-astato-benzyl-guanidine(At-211 MABG)のGood Manufacturing Practice (GMP)レベルでの合成に成功した。α線は高いエネルギーを放出し飛程が短いことから、高い有効性と副作用の軽減が期待され、患者の隔離も不要である。本薬はラット褐色細胞腫PC12を用量依存性に増殖抑制した。正常マウス(BALB/c)における拡張型単回投与毒性試験においてマウスのseverely toxic dose in 10% (STD10)は80MBq/kg以上と推定された。STD10のヒト等価用量の1/10をヒトへの初回用量としてPh1医師主導治験を2022年7月より開始した(jRCT2021220012)。方法:対象は、CVD療法もしくはI-131 MIBG療法に不応の褐色細胞種及びパラガングリオーマで、I-123 MIBGシンチグラフィで集積陽性が確認されている患者。本薬0.65Mbq/kgを開始用量として単回bolus投与し、Fibonacci変法により公比1:2:2とした3+3デザインによる3コホートの用量漸増を行う。Recommended Doseを決定することを目的に主要評価項目は投与後6週間でのDose Limiting Toxicity(DLT)と設定した。副次的に放射線薬物動態、尿中放射能排出率、尿中カテコラミン奏効割合、客観的奏効割合、Progression Free Survival、I-123 MIBGシンチグラフィによる腫瘍集積減少効果、Quality of Lifeの評価を行う。結果・考察:コホート1の登録を終了し、コホート2を実施中である。結論:世界初となるα線核種を標識した低分子化合物として薬機法承認を目指し、2023年より日本医療開発機構からの研究費を得たことから、開発を加速させていきたい。