主催: 日本臨床薬理学会
近年,医薬品開発においてMIDD(Model-Informed Drug Development)のアプローチは,国内外問わず,多くの製薬企業において新薬の承認申請や剤形追加,適応追加,用法用量変更等,様々な場面で利用されている。MIDDで用いられるモデル解析には,母集団薬物動態(PPK)解析,薬物動態/薬力学(PK/PD)解析,PPK/PD解析,曝露反応(E-R)解析,生理学的薬物速度論(PBPK)解析,定量的システム薬理学解析等,多岐に渡る。上記のモデル解析の中で,PPK/PD解析(2019年),E-R解析(2020年),PBPK解析(2020年)に関してはMHLWよりガイドラインが発出され,国内でもMIDDの実施環境が整備されてきている。本邦に先んじてガイドラインが発出された欧米を含め,各規制当局でモデル解析のガイドラインが整備されてきている流れを踏まえ,国際調和を図る目的で2022年にMIDDがICH M15として新規トピックに採択された。M15ガイドラインは,これらのモデル解析を包含した医薬品開発の過程におけるMIDDの一般的な原則を概説するとともに,医薬品のライフサイクルを通じて規制当局と製薬企業のMIDDに関わるコミュニケーションを改善することを目的とし,データソースと結果に関する定量的戦略,結果の分析と解釈,報告と文書化の標準化に関するガイドラインを示すことを目指している。これらは,ICHのウェブサイトで公開されているconcept paperでも触れられている。さらに,モデル解析の信頼性評価については,FDA1とEMA2によるWhite paperでASME V&V40の考え方に基づくcredibility assessment frameworkが提案されている。
本発表では,M15ガイドライン作成の背景を含め,同ガイドラインの方向性及び現状を開示可能な範囲で紹介する。また,製薬企業におけるMIDDの活用事例を紹介するとともに,上記frameworkを用いて事例を評価した結果についても紹介する。
参考文献
1. Kuemmel C, et al. Consideration of a credibility assessment framework in model-informed drug development: potential application to physiologically-based pharmacokinetic modeling and simulation. CPT Pharmacometrics Syst. Pharmacol. 2020;9:21-8.
2. Musuamba FT, et al. Scientific and regulatory evaluation of mechanistic in silico drug and disease models in drug development: Building model credibility. CPT Pharmacometrics Syst. Pharmacol. 2021;10:804-25.