主催: 日本臨床薬理学会
【目的】神経ペプチドである下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)は多様な生理活性をもち、免疫系の調節や血管拡張因子としての役割がある。また様々な腫瘍の病態を修飾することから、治療の手がかりとして注目されている。肝細胞癌(HCC)は再発率の高い予後不良の癌腫で、副作用の少ない有効な化学療法薬は少ない。これまで患者由来のHCC組織においてPACAPおよびその受容体 (PACAP1, VPAC1 そしてVPAC2)の発現を確認しているが、その役割についての詳細は不明である。本研究では、PACAPのHCCに対する作用を明らかにすることを目的とした。【方法】HCC細胞株の HepG2 およびHuh7にPACAP-38(10-12 M-10-8 M)を添加して培養後(24h, 48h, 72h)、細胞増殖反応をMTS法で検討した。アポトーシスはヒストン複合型 DNA 断片をELISAで解析した。アポトーシス関連蛋白(Caspace3、BclxL)およびGPCRを介したセカンドメッセンジャーに与える影響をウエスタンブロットで検討した。【結果・考察】PACAPの生体内濃度に近似する10-11Mまたは10-10M は培養48hでHepG2およびHuh7の細胞増殖を有意に抑制した。またアポトーシスの増加とBclxLの発現低下およびcaspase3発現の増加も認め、HCC細胞増殖の抑制はアポトーシスに起因することが示唆された。【結論】以上の結果より、PACAPはHCC細胞のアポトーシスを誘導し、がん細胞増殖の抑制に働くと考えられた。