日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_3-C-S40-4
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最新の治療法とドーピング:遺伝子ドーピング
*秋本 崇之
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抄録

ドーピングは,スポーツにおいて禁止されている薬物などを用いて,競技パフォーマンスを向上させようとする行為である.医学・薬学研究の成果物である治療薬が,スポーツ界において不正に利用されることがある.アスリートの健康を守り,平等な競技条件(クリーンスポーツ)を確保するために,世界アンチ・ドーピング機構(WADA),国際オリンピック委員会,国際競技連盟は,競技パフォーマンスを向上させる物質や方法をドーピングと認め,禁止してきた.それにもかかわらず,勝利への欲望が,これらの禁止薬物や方法を悪用するアスリートを生み出している. さらに,近年の遺伝子治療やゲノム医療の急速に進歩に伴い,遺伝子レベルでドーピングが行われる可能性が懸念されている.WADAは,遺伝子や細胞を用いたドーピングを「運動能力を向上させる能力を持つ遺伝子,遺伝要素および/または細胞の非治療的使用」と定義し,2003年の世界アンチ・ドーピング規定の改訂において,これらを新たな禁止項目として追加した.  現時点でも,貧血,筋ジストロフィー,末梢血管疾患といった疾患の治療のために開発されてきた遺伝子治療薬は,ドーピングにも利用される可能性がある.また,今後の生命科学技術の進歩により,このような可能性を持つ遺伝子は今後数多く発見されるだろう.このため,適切な規制の整備と,検出方法の開発が重要である. 本発表では,遺伝子ドーピングの現状とパフォーマンス向上遺伝子の候補,検出方法の開発状況について概説する.

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