主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第45回日本臨床薬理学会学術総会
開催地: さいたま市
開催日: 2024/12/13 - 2024/12/14
p. 25-
【目的】急性緑内障発作は、急性の隅角閉塞により眼圧が上昇し、眼圧下降が停滞すると数日で失明に至る可能性がある疾患である。抗コリン薬等は、その作用機序から急性緑内障発作を引き起こす可能性が否定できないため、閉塞隅角緑内症患者への投与が禁忌とされている。本研究は、閉塞隅角緑内障を禁忌とする薬剤による急性緑内障発作発症リスクを明らかにすることを目的とした。 【方法】DeSCヘルスケア株式会社が保有するレセプトデータベースを用いて後ろ向きケースコホート研究を行った。40歳以上かつ緑内障関連の手術歴を有さない調査対象者候補から60万人を無作為に選択しサブコホートとした。ケースを急性緑内障発作に対する手術により特定した。閉塞隅角緑内障への投与が禁忌とされている127種類の医薬品を調査対象薬とし、サブコホートについてはコホート登録日、ケースについてはケース発生日以前30日間に禁忌薬の処方があることを曝露ありとした。年齢、性別及びエントリー年を共変量とし、ロジスティック回帰分析を用いてサブコホートコントロールに対するケースの曝露オッズ比(OR)を推定した。 【結果・考察】調査対象者候補7,745,687人からケース10,799人が特定された。急性緑内障発作のリスク増加との関連が認められたのは17種類あり、オッズ比が高い上位8種類はいずれも眼科領域で使用され散瞳作用を有する医薬品であり(シクロペントラート塩酸塩[OR:1856.28]、フェニレフリン塩酸塩[123.83]、トロピカミド・フェニレフリン塩酸塩[52.96]、アドレナリン[42.62]、トロピカミド[34.15]、ナファゾリン塩酸塩[25.05]、リドカイン塩酸塩・アドレナリン[18.41]、アトロピン硫酸塩水和物[7.68])、これらは特に高いリスクを有すると考えられた。残りは、ベンゾジアゼピン受容体作動薬が6種類(アルプラゾラム[2.09]、エスゾピクロン[1.37]、クロチアゼパム[1.27]、ジアゼパム[4.55]、ゾルピデム酒石酸塩[1.29]、ロフラゼプ酸エチル[1.61])及びその他3種類(塩酸デュロキセチン[1.56]、フルチカゾンフランカルボン酸エステル・ウメクリジニウム臭化物[3.58]、プリジノールメシル酸塩[1.95])であった。 【結論】一部の薬剤で、急性緑内障発作のリスクを増加させる可能性が示唆された。閉塞隅角緑内障が禁忌とされている医薬品について、急性緑内障発作のリスクを定量的に評価し、エビデンスに基づいて適正使用につなげる必要があると考える。