主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第45回日本臨床薬理学会学術総会
開催地: さいたま市
開催日: 2024/12/13 - 2024/12/14
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【背景】 母集団薬物動態(PPK)解析は、新規化合物のPKの把握のみならず、市販後の臨床現場においても、有効血中濃度域が狭く、TDMを必要とする薬物を中心に多く利活用されている。バンコマイシンのPPKモデルの報告数は、PubMed検索において2024年6月時点で335編と極めて多い。それらの患者背景は多様で、かつ、対象が限定され、さらに各論文の患者除外基準が一様ではないために、ほかの疾患や病態の投与設計には再利用しにくいという問題がある。 そこで、まず、特殊患者集団のTDMデータ(すなわち、real world data)を用いた一例として、がん患者におけるバンコマイシンのPPK解析を紹介する(鈴木萌子ほか.TDM研究.2019)。次に、臨床現場で応用されにくい現状に対応するべく、幅広い患者背景に適用可能なモデルを構築することを目的とし、Model-simulated Model-based Meta-analysis method(M3 method)を開発した。今回はバンコマイシンを例に、M3 method によりvirtual world dataを生成し、それに対するモデルを構築した。 【方法】 まず、バンコマイシンを投与した血液がん患者を含む246例から得られた血中濃度データ433点を用いてPPK解析を行った。次に、Meta-analysisの対象文献をPubMed検索により選定した。対象の各論文より収集した情報を用いて、仮想患者、および血中濃度を多数回のシミュレーションにより、virtual world dataとして生成した。仮想患者、投与量および採血時点の生成にはR、血中濃度の発生およびPPK解析にはPhoenix NLMEを用いた。 【結果】 まず、real world dataによるPPK解析は、2-compartment modelを用いた。次に、Meta-analysisの対象は成人のみで、かつクリアランス(CL)の共変量にクレアチニンクリアランス(CCR)を含むパラメトリックPPKモデル20編とした。M3 methodによるモデルのCLには、CCRに加えて実体重が共変量として見出された。外部予測性は良好であった。 【結論】 M3 methodによるPPKモデルは、肥満、高齢者および敗血症等の幅広い患者の個別化予測に応用できることが示唆された。Meta-analysisの手法およびコンピュータ・シミュレーション技術を応用する本方法は、治験の対象外となるreal worldの患者に対して、臨床応用を想定した用法用量の探索が可能であり、既存のTDMソフトウェアを拡張するに資すると考える。