主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第46回日本臨床薬理学会学術総会
開催地: 東京都千代田区
開催日: 2025/12/05 - 2025/12/06
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医薬品の適正使用には多くのピットフォールが潜んでおり、その中でも処方オーダーに纏わる不備は時として重大な医療事故にもつながる。英国の卒前医学教育に倣い、本邦の医学部教育にもPrescribing safety assessment(PSA)を導入すべく、臨床薬理学会としても準備を進めている。本講演では、薬剤師の立場としてのPSAワーキンググループの参画やこれまでの臨床経験を中心に紹介したい。 薬物投与設計には、薬物動態学の理解は避けて通れない。例えば、直接経口抗凝固薬は、P-糖タンパク質により体内動態が規定される共通点がある。実際、P-糖タンパク質の阻害薬・誘導薬により塞栓・出血リスクが増大することが報告されており、併用薬の評価を踏まえて処方すべきである。直接経口抗凝固薬の恩恵を最大化するには、薬物動態学的評価は欠かせない過程である。 処方箋の臨床検査値の印字が普及し、疑義照会の効率化が図られてきた。その中でも腎機能に関連する疑義照会は高頻度であり、裏を返せば腎排泄型薬剤の用量設定が軽視されていることを示唆する。実際、バラシクロビルの減量が行われず、中毒性脳症が認められた事例が散見される。次に、カリウムに関連する疑義照会も遭遇頻度が高く、特に心腎保護薬などの基本薬は高カリウム血症の被疑薬となり、診療科を問わず確実に理解しておきたい内容である。 注射薬の配合変化に目を向けると、医薬品に適した溶解液の取捨選択には、化学の素養が求められ、薬剤師の立場として作問した。コロイド製剤である含糖酸化鉄は、生理食塩液の希釈により塩析が生じるピットフォールがある。また、医薬品の休薬期間にも注意を払わなければならない。免疫抑制薬メトトレキサートを誤って連日投与すると、口内炎や骨髄抑制などの副作用が顕在化するため、適切な処方オーダーが最大の防衛策となることを理解すべきである。 臨床現場で直面する処方オーダーの課題である、薬物動態・相互作用、腎機能に基づく用量調整、配合変化や休薬期間の管理などは、いずれも適正な薬物療法に直結し、PSAにおいても重視すべき内容である。卒前教育の段階でPSAを導入することは、医療安全の基盤強化につながると考えられる。