2022 年 73 巻 2 号 p. 1-12
本研究は、わが国の初期電気事業改革(1995年の電気事業法改正等による一連の改革で、第1次電力規制改革とも称される)を考察対象として、政策・制度の選択過程における各関連主体(事業者・規制者・新規参入者等であり、アクターと称される)の認識や行動を分析し、サステイナビリティ・トランジション分野の研究(ST研究)の蓄積をふまえて制度改革のダイナミズムなどを考察した。本研究は、ST研究で蓄積されてきたフレームワークやケース・スタディの知見をふまえ、わが国の第1次電力規制改革時のアクターの認識・行動を対象として行うヒューリスティックな質的研究である。観察記録は業界専門紙(『電気新聞』)の特定期間の記事で代替し、解釈的パラダイムを意識してSCATによる分析を行った。この結果として、たとえば初期の制度改革が既存システムへの補完的役割を果たすために付加(add-on)されることなど、当時の具体的な経路とダイナミズムの一端を明らかにした。