2022 年 73 巻 2 号 p. 13-28
固定ブロードバンドネットワークは社会生活のあらゆる活動を支える存在であるが、それが提供する通信品質については一般消費者に十分理解されているとはいえない。合理的な購買決定を行うに足るだけの十分な情報提供が行われている状況とは程遠く、市場メカニズムの下での適正な資源配分が確保されていることは期待できない。本稿では2009年11月以来、筆者がほぼ年1回のペースで計10回実施した、わが国の固定ブロードバンド実効速度調査の分析結果を提示し、政府において展開されている固定ブロードバンドの速度計測をめぐる議論の基礎資料とすることを目的とする。分析の結果、固定ブロードバンドの実効速度は平均的に改善されてきてはいるが、契約速度に対する比率は低下傾向にあることや、計測サンプルが直面するさまざまな環境要因が統計的に有意な影響を及ぼしていることがわかった。消費者の直面する情報の非対称性を解消する目的で実効速度の計測を行い、その結果を開示する場合には、本稿のような実証分析を蓄積し、その知見を用いて計測結果を事後的に修正する必要がある。