日本の内航海運は、国内貨物輸送を担う重要な輸送手段であるが、事業経営の脆弱性から、船舶の老朽化や船員の高齢化など多くの問題を抱えている。本稿では、日本と同様に海運産業が発展している、イギリス、韓国、アメリカ、オーストラリアを対象国として取り上げ、①船員の高齢化と船員不足への懸念、②脆弱な事業基盤や船舶の高齢化、③自動運航技術等の新技術の進展の3つの課題について、当該国の政策の現状と問題点を検討した。その結果、日本の内航海運政策への示唆として、①については、船員教育の義務化、外国人船員の雇用および産官学連携の教育制度を日本で導入することは難しいこと、②については、現状の金利低減措置では根本的な解決には至らず、内航海運事業者の経営状況を改善するためには新たな政策を講じる必要があること、③については、対象国と新技術活用の方向性が異なることを踏まえ、大手事業者を中心にその早期導入は進めつつも、別途船員不足の解消や労働環境の改善のための施策を展開する必要があることを明らかにした。