抄録
医療の質の向上と安全の確保は医療機関が最優先に取り組むべき課題のひとつとして位置づけられ,看護職においても医療安全教育が臨床だけでなく基礎教育においても徐々に浸透している.しかし,教育機関と臨床の連携や,医療安全教育に携わる人材の育成などにおいて課題も多い.そこで,臨地実習を受け入れる看護職員と教員の連携,複数の専門科目の教育内容の中に「安全」の概念を組み込んだカリキュラム,医療安全管理者の看護基礎教育・継続教育双方への介入といった先駆的な取り組みを通して,看護職の医療安全教育についての検討を行った.
医療安全教育を看護師の専門職教育の重要な要素と位置づけ,基礎教育,新人教育,熟練者に至るまで,継続的,かつ継ぎ目のない教育体制の構築に向けて取り組んでいく必要がある.そのためには,教員と臨床実習指導者,医療安全の専門職である医療安全管理者,さらには看護管理者が,安全教育の知識・技術を共有し,学生および新人看護師を育成する体制を構築するための緊密な連携・協働が必要不可欠である.
なお,本稿は第11回医療の質・安全学会学術集会パネルディスカッション10で発表した内容を収録したものである.