© 目的:キャリア初期看護師にとってのインシデント経験の意味を明らかにすることである.
方法:本研究は,質的帰納的研究デザインである.①東京都内にある急性期病院で勤務する常勤看護師で,②当事者としてインシデントを経験した後も同じ医療施設で勤務を続けており,③経験年数3年以上7年未満の10名を対象に,インタビューガイドに基づく半構造化面接を実施した.分析は,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に行った.
結果:キャリア初期看護師にとってのインシデント経験の意味とは,39の概念と12のサブカテゴリを経て,3つのカテゴリ:【疼き続ける心の傷】,【臨床の積み重ねから紡がれる実践知】,【ときに導かれ,ときに脅かされる他者とのかかわり】に収束し,"人を看護する責任の重みとの対峙"というコアカテゴリで表された.
結論:インシデントに遭遇したキャリア初期看護師には【疼き続ける心の傷】が刻まれていた.しかし一方
で,看護師を続けながら視野を拡げていくなかインシデントと向き合い,省察を通じて【臨床の積み重ねから紡がれる実践知】へと昇華もさせていた.これらは,【ときに導かれ,ときに脅かされる他者とのかかわり】のなかで変容し,医療がもつ危険性とその医療を提供する看護師の職責を実感する,"人を看護する責任の重みとの対峙"として表された.