医療の質・安全学会誌
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原著
医療エラーの寄与因子の階層構造および原因帰属の職系別傾向の特定
藤本 学島村 美香大野 浩正宮崎 浩彰
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2023 年 18 巻 3 号 p. 275-285

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抄録
目的:インシデントレポートの分析は,医療エラーを防止する上で重要な役割を果たす.しかし,報告システムの寄与因子は統一されておらず,また医療者が認識している主観的現実も反映されていない.そこで,本研究は医療者の認識に基づく網羅的で体系的な寄与因子のカテゴリシステムを開発することを目的とする.そのために,寄与因子の階層構造を同定した上で,原因帰属における職系別の傾向について検証する.
対象と方法:急性期型基幹病院に勤務する全職種の職員を対象に質問紙調査を実施した.
結果:3上位因子7下位因子からなる階層構造が同定された.全体として,[外部]と[認知]が未処置および軽度の事案と正の関連性を示し,[社会]が未処置の,[組織]が軽度の事案と負の関連性を示した.また,看護師系は医師系より多様かつ抑制的な原因帰属を行っていた.
考察および結論:医療者は自らの職種に応じて,医療エラーの原因を自らの軽率さや患者・医療用品の問題に帰属する傾向にある.しかし,それは医療エラーの発生を促す.実効的な対策として,安易に自他を責めず,社会や組織に原因を帰属する抑制的な考え方を浸透させることが重要である.
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