抄録
目的:入院患者の転倒・転落のリスクマネジメントが医療現場の重要課題の一つとなっている.Coroban®は看護記録を人工知能が解析することで効率的な転倒・転落リスクの算出・把握が可能なツールとして開発された.本研究は,入院患者に対するCoroban®の転倒・転落予測精度を評価することを目的として計画した.
対象と方法:2020年4月から2021年1月にHITO病院に入院した患者の転倒・転落アセスメントシート、インシデントレポート及びCoroban®の転倒・転落予測データを一括で抽出し,転倒・転落インシデント発生率,Coroban®及び転倒・転落アセスメントシートの転倒・転落予測精度(感度,特異度及び発報率)を算出した.
結果:転倒・転落インシデント発生率は4.54‰であった .Coroban®及び転倒・転落アセスメントシートの感度は56%及び99%,特異度は70%及び7%であった.また,アラート発報の設定を,重症度3b以上のインシデントを80%捕捉する値(0.329)に変更した際の感度及び特異度は82%及び49%であった.
結論:Coroban®は従来の転倒・転落アセスメントシートに比較して転倒・転落インシデント予測の特異度が高く,毎日の看護記録を AI が解析し転倒・転落リスクを表示するため、効率的なリスク算出や把握が可能となり、医療従事者の負担軽減にも寄与する可能性があることが示唆された.