抄録
背景:診療ガイドラインは,患者らに適切に現在の標準治療を伝える重要なツールの一つとして,がん相談の場でも活用されることが期待されているが,その活用実態はわかっていない.本研究では,がん相談支援センターの相談員を対象に,診療ガイドラインの利用状況(利用種類数と利用意向場面の数)を明らかにし,活用促進の方策を検討することを目的とした.
方法:2022年4月に相談員に対して,医療者向け診療ガイドライン25種類,患者向け診療ガイド8種類の利用状況を尋ねるオンライン調査を実施した.730名より回答が得られ,診療ガイドラインの利用状況と職種や研修受講を含む背景要因との関連を分析した.
結果:医療者向け診療ガイドラインおよび患者向けガイドの利用種類数は,それぞれ平均7.2種/ 3.6種であっ
た.利用意向場面は,自身の勉強や相談者への説明時の利用など提示した5場面中3つ以上で利用したい者は6割を超えていた.また診療ガイドラインの利用種類数には,相談員の従事形態や職種,相談対応の経験や件数が関連しており,研修受講は有意に診療ガイドラインの利用を高めていた.
考察:相談員の診療ガイドラインの利用種類数は少ないが利用意向は高く,今後の活用が期待された.また診療ガイドラインの利用状況と研修受講の関連が示され,相談員に対する研修を通じて,診療ガイドラインの活用を促進し,標準治療の情報を活用する知識やスキルの向上につながると考えられた.