医療の質・安全学会誌
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総説
血液製剤をめぐる総合的な安全確保対策
河原 和夫
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2007 年 2 巻 1 号 p. 33-38

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抄録

目的 : 血液製剤の安全対策は, 献血に始まり製造工程から医療現場での製剤の使用, そして輸血後の健康被害の救済に至るまで, 各段階の対策を包括的に論じなければならない.
本稿は, 患者安全対策のみならず, 血液製剤の総合的な安全対策の実情を述べ, 課題を整理するとともに今後の方向性を示すことを目的としている.
方法 : 国内外の献血者の健康被害の救済制度, 血液製剤の安全性確保対策, 輸血医療での有害事象の発生の特性ならびに輸血後感染症の救済制度に関する文献等の考察を行った.
結果 : 従来より行われている輸血後の健康被害者の救済制度に加えて, 2006年10月1日より献血者の救済制度が導入されたが, これらの健康被害に対する国の金銭的な関与はない. 一方, 輸血医療の現場でのインシデントやアクシデントの発端者や態様には特徴が見られた.
結論 : 救済制度の運営については, 財源負担も含めて国の積極的な関与が必要である. 輸血医療の安全性向上のためには, インシデントやアクシデントの発端者の職種と有害事象の態様との関係により輸血医療の工程管理が求められる. また, 包括的な報告制度と遡及調査体制の構築も必要である.

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© 2007 医療の質・安全学会
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