医療の質・安全学会誌
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総説
医療における分析手法の運用の実際
―特にRCA (根本原因分析法) を中心に
相馬 孝博
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ジャーナル 認証あり

2007 年 2 巻 1 号 p. 39-46

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抄録

品質管理手法は, 各種産業において, 科学的な信頼性管理手法として発展してきた. 発生事例から学ぶ事後学習型の分析手法は, 事前予測型の分析手法よりも比較的簡単であり, 医療分野において使いやすい. 前者には, RCA (Root Cause Analysis) をはじめとして数種類あるが, 本質的に大きな変わりはない. いずれも (1) 発生事実の把握, (2) 原因の追究, (3) 予防の対策立案という3段階からなる. 分析内容の客観性を担保するために多職種からなるメンバーを招集するが, 労力のかかる作業であるので, 時間管理が非常に重要となる. 具体的には (1) 発生事象を整理し, 時系列にいくつかの段階に分割する, (2) 各段階で, ブレーンストーミング法により原因を追究し, 抽出された原因の因果関係を考察する (RCAではカテゴリーの分類を後回しにできる), (3) プロセスやシステムを改善させる対策を立案し実行して検証する, という手順となる. 注意すべきは, 「原因列挙をできるだけ網羅的にするため, 医師をはじめ多職種の視点を導入すること」「有効な対策立案のため, 病院資源の配分に決定権のある幹部が必ず参加すること」の2点である.

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© 2007 医療の質・安全学会
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