医療の質・安全学会誌
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2 巻, 1 号
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原著
  • 小西 唯夫, 吉村 貞紀, 岡田 有策, 村垣 善浩, 伊関 洋
    2007 年 2 巻 1 号 p. 5-17
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2009/02/27
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    目的 : 医療事故未然防止の観点から潜在的なエラー要因を抽出し, エラー要因や対策の優先度を定量的に評価する新たな手法 (EFACE) を考案した. 臨床現場に本手法を適用して妥当性を確認した.
    手法の説明 : (1) インシデントを総合的に評価し対策優先エラーを導出する. (2) 医療に特化したエラー要因チェックリスト, エラー要因チャートを用いて潜在的なエラー要因を分析する. (3) エラー要因と対策案の優先度を示すI/E値を算出して対策を実施する.
    対象と方法 : 99床の医療機関における321件のインシデントデータ (2004年3月から2005年2月収集) に本手法を適用して対象とする事故と対策を選定し, 実施した.
    結果 : 対策優先度が高かった転倒を分析し, 33のエラー要因, 89の対策案を導出した. さらにI/E値を算出して対策を実施した. 転倒件数は対策前6カ月が平均8.17件/月, 対策後6カ月が平均2.17件/月と有意に減少した (P <0.001).
    結論 : 本研究にて考案した手法を用いて事故防止策を講じたことで, 転倒事故が著しく減少した.
  • 森本 剛, 雛田 知子, 長尾 能雅, 坪山 直生
    2007 年 2 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 日本における転倒・転落の疫学は明らかでなく, 本研究は大学病院における転倒・転落の疫学を明らかにすると共に, それらのデータを基にした各病棟の特性に応じた病棟リスクスコアの開発を試みた.
    対象と方法 : 1220床の大学病院の小児科, 産婦人科, ICUを除く18病棟で2006年6月の1ヶ月間に入院した全患者について, 転倒転落アセスメントシートを調査し, その後の転倒・転落事故の発生をフォローした. 解析は記述統計に加え, 各病棟の変数を基に多変量ロジスティックモデルを用いて, リスクスコアを算出した.
    結果 : 平均年齢60歳の対象患者1280人は中央値15日の在院中に37件の転倒, 8件の転落事故が発生し, 1000 patient-dayあたりの転倒は1.2件, 転落は0.3件の発生率であった. 転倒の発生率はリスク1群では0.8件であったのに対して, リスク2群及びリスク3群では1.9件であった. 病棟における転倒の独立関連因子はインシデントレポート総数, 看護助手数, 平日日勤看護師数であり, 転倒・転落リスク群の患者数を加えた変数で病棟転倒リスクスコアを作成したところ, 良好な予測能であった.
    結論 : 本研究により, 大学病院における転倒・転落の現状の一端が明らかとなっただけでなく, 病棟リスクスコアは今後の転倒・転落対策介入の指標となると考えられる.
総説
  • オントロジーによる意味の管理技術
    松本 斉子, 徃住 彰文
    2007 年 2 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル 認証あり
    医療現場における各種のコミュニケーションと知識の活用を支援するための最前線の試みが医療オントロジーである. 医療オントロジーによって, 異なる知識エージェント間での円滑な意味・内容の交換が容易になるという利点がある. オントロジーという用語はかなり広範囲の対象について用いられているが, 本稿では, 医療の場におけるコミュニケーション, および, エラーの低減に役立つ知見を, 語彙の意味や概念の内容の交換という観点から再整理し, 医療の質と安全にどのように貢献できるかを考察する.
  • 河原 和夫
    2007 年 2 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 血液製剤の安全対策は, 献血に始まり製造工程から医療現場での製剤の使用, そして輸血後の健康被害の救済に至るまで, 各段階の対策を包括的に論じなければならない.
    本稿は, 患者安全対策のみならず, 血液製剤の総合的な安全対策の実情を述べ, 課題を整理するとともに今後の方向性を示すことを目的としている.
    方法 : 国内外の献血者の健康被害の救済制度, 血液製剤の安全性確保対策, 輸血医療での有害事象の発生の特性ならびに輸血後感染症の救済制度に関する文献等の考察を行った.
    結果 : 従来より行われている輸血後の健康被害者の救済制度に加えて, 2006年10月1日より献血者の救済制度が導入されたが, これらの健康被害に対する国の金銭的な関与はない. 一方, 輸血医療の現場でのインシデントやアクシデントの発端者や態様には特徴が見られた.
    結論 : 救済制度の運営については, 財源負担も含めて国の積極的な関与が必要である. 輸血医療の安全性向上のためには, インシデントやアクシデントの発端者の職種と有害事象の態様との関係により輸血医療の工程管理が求められる. また, 包括的な報告制度と遡及調査体制の構築も必要である.
  • ―特にRCA (根本原因分析法) を中心に
    相馬 孝博
    2007 年 2 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2009/02/27
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    品質管理手法は, 各種産業において, 科学的な信頼性管理手法として発展してきた. 発生事例から学ぶ事後学習型の分析手法は, 事前予測型の分析手法よりも比較的簡単であり, 医療分野において使いやすい. 前者には, RCA (Root Cause Analysis) をはじめとして数種類あるが, 本質的に大きな変わりはない. いずれも (1) 発生事実の把握, (2) 原因の追究, (3) 予防の対策立案という3段階からなる. 分析内容の客観性を担保するために多職種からなるメンバーを招集するが, 労力のかかる作業であるので, 時間管理が非常に重要となる. 具体的には (1) 発生事象を整理し, 時系列にいくつかの段階に分割する, (2) 各段階で, ブレーンストーミング法により原因を追究し, 抽出された原因の因果関係を考察する (RCAではカテゴリーの分類を後回しにできる), (3) プロセスやシステムを改善させる対策を立案し実行して検証する, という手順となる. 注意すべきは, 「原因列挙をできるだけ網羅的にするため, 医師をはじめ多職種の視点を導入すること」「有効な対策立案のため, 病院資源の配分に決定権のある幹部が必ず参加すること」の2点である.
第1回学術集会報告
特別講演
シンポジウム1
シンポジウム2
ワークショップ1
ワークショップ2
ワークショップ3
ワークショップ4
ワークショップ5
ワークショップ6
ワークショップ7
ワークショップ8
ワークショップ9
ミニワークショップ
ベストプラクティス報告
  • ―私たちの取り組みと工夫
    2007 年 2 巻 1 号 p. 100
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル 認証あり
  • 田口 浩子, 清水 真由子, 浅田 早紀, 狩野 理恵, 笠原 光子, 富所 順子, 神田 大輔, 吉永 輝夫, 西田 保二
    2007 年 2 巻 1 号 p. 101-105
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2009/02/27
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    輸液治療は日常広く行われているが, 輸液時のヒューマンエラーは重大な事故に至ることがある. 輸液業務において, すべての看護師が輸液ミスの重大性を認識して, 集中力・注意力・緊張感を持続させ, ミスが起きないような意識を高めるための対策を検討した.
    アンケート調査に基づいた改善策として, 白血病治療センター (以下当センター) 独自の “点滴施行マニュアル” と携帯用に新たに作成した “点滴施行時の確認事項” を毎日, 各勤務時に復唱することにした. 復唱・指差し呼称することは当センター全体のスタイルとして定着し, 問題意識を共有することが可能となった.
    しかし, 以前集中発生した致命的となりうる輸液ミスはなくすことができたが, より軽度なミスも取り上げられるようになり, 結果として報告件数が増えた.
    今回, 有効であった改善策を今後も継続していくこと, 個々の経験や能力に応じた看護教育・支援を確立していく環境や組織づくりが, 今後の課題として挙げられた.
公開シンポジウム
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