社会学評論
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論文
「国語」の変容と教育システムの自律
1920年代における言語および内面性の変容
田村 謙典
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2007 年 58 巻 3 号 p. 286-304

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抄録
本研究では,「国語」における言語の地位の変化が,教育システムの自律を可能にしたことを論じている.1920年以前において言語は,社会的な秩序を内面へと否応なく押しつける存在として規定されていた.このような言語への規定により,言語を通した間主観的な了解形成への意識が希薄化し,結果として教員と生徒の相互行為への着目がなされなかった.しかし1920年以後,言語は「解釈すべき何か」として規定された.このような言語の規定は,言語を通した内面の理解が解釈としかなりえないことを意味し,内面の解釈が言語活動において求められることになった.結果,ミクロなレベルでは自己省察が,マクロなレベルでは教員と生徒の相互行為が〈発見〉され,前者は自己へのまなざしを内面化する自己準拠的な主体育成の制度化,後者は教育システムの自律を可能にする.これまで文学の分野を中心に,言語活動の実践形態から言語それ自体の位置価を説明し,言語活動の歴史性を描くことが試みられてきた.本稿はそれらの研究に棹差し,教育における言語の文化的・社会学的意義を論じるものである.
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© 2007 日本社会学会
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