社会学評論
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社会地区分析再考
KS法クラスター分析による2大都市圏の構造比較
浅川 達人
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2008 年 59 巻 2 号 p. 299-315

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抄録

社会地区分析は因子生態学の研究手法として登場した.しかしながら,大きな因子負荷量を示す少数の因子のみによって因子構造を解釈することになるため,負荷量の小さな変数を無視することになり,因子構造の解釈が粗雑になる可能性がある点が指摘されている.
この危険性を回避するために,クラスター分析が用いられる.SPSSなどの統計解析ソフトでは,階層的クラスター分析とK-means法が一般的には用いられている.しかし,どちらの手法も最終的にいくつのクラスターを「最適解」として抽出するかのアルゴリズムをもたず,分析者が判断せざるをえないため,クラスター化の判断が困難となっていた.
これらの問題点を回避することができる手法であるKS法クラスター分析を用いて,東京大都市圏と京阪神大都市圏の2大都市圏の構造比較を試みた.無料で提供されている2000年の国勢調査,2001年の事業所・企業統計調査データを用い,東京都千代田区,大阪市中央区から,それぞれ半径70kmに含まれる市区町村(計471市区町村)を対象地域として分析を行った.その結果,東京大都市圏については同じ手法を使用した先行研究と近似した社会地区が析出され,京阪神大都市圏については多核心構造が見出された.KS法クラスター分析は,社会地区分析の標準的な手法の1つとなる可能性をもつと考えられる.

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© 2008 日本社会学会
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