社会学評論
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59 巻 , 2 号
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投稿論文
  • 周東 美材
    2008 年 59 巻 2 号 p. 262-280
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿は,1918年創刊の雑誌『赤い鳥』に所収された童謡を対象として,メディア論の視座から考察し,近代日本における「声」の文化の一端を描き出すものである.
    童謡は,初期の『赤い鳥』において音楽としてではなく,詩として創作されていた.童謡が文字で表現されながら歌謡として成立しえたのは,それが読者によって声に出して読まれ,自由な節を付けられていたためであった.童謡を歌うという営みは,伝統的な社会において歌われ伝承されていたわらべうたを,詩という複製技術を手段にすることによって復興させようとする北原白秋らの論理に支えられていた.
    童謡からみてとれるのは,近代において声の文化なるものを想像するときに逃れることのできない文字の位相である.声と文字は,それぞれ自律したシステムとして存在するのではなく,むしろ一方の内に他方が潜み,相互に重なり合うような関係にある.声と文字とは技術的な媒介や当該社会における実践や想像力など,多様な要因によってさまざまに分節される.とりわけ印刷技術は,近代社会において声の文化の形成の重要な一要素となる.
    本稿は童謡の検討を通じて,文字や声の文化の関係を一義的に決定する要因としてメディアを捉えるのではなく,声や文字を新たに関係付ける再編の契機として,さらに多様な文化を生み出す生成の契機としてメディアを捉え直す.
  • 大門 信也
    2008 年 59 巻 2 号 p. 281-298
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    日本では1970年代前半に公害反対運動を大きな契機として,公害・環境問題に対処する諸制度が形成された.これらが制定され30年を経た今日,その運用過程においてどのような問題が生じているのかを明らかにする必要がある.そこで本稿では,新幹線公害対策制度とそれをめぐる紛争事例を取りあげ,第1に,制度が硬直的に運用されることでどのような問題が生じているのか,第2に,なぜ硬直的運用が生じてしまうのかについて検討した.その結果,この制度が,技術的対策が可能かどうかに関する情報を重視する一方で,受苦が発生しているかどうかに関する情報を相対的に軽視して作られており,またその制度が硬直的に運用されることで,受苦の実態が看過され,地域からの制度の見直し要求が看過されている実態が明らかになった.こうした制度の硬直的運用は,直接的には,沿線に生じる受苦の把握が軽視され,本来手段にすぎない環境基準値の達成が目的化されることにより生じていることが確認された.さらにそれを恒常的に生じさせる構造的要因として,制度の運用の中心的な担い手である行政と専門家とが相互に正統性を付与しあう構造的関係が見出された.本稿ではこれを〈正統化の循環〉と呼ぶ.この問題を打破するためには,振動に関する審議会への公衆衛生学者の参与,制度運用の中での定期的な疫学的調査の実施等,幅広い受苦情報を意志決定過程に取り込む必要があると考える.
  • 浅川 達人
    2008 年 59 巻 2 号 p. 299-315
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    社会地区分析は因子生態学の研究手法として登場した.しかしながら,大きな因子負荷量を示す少数の因子のみによって因子構造を解釈することになるため,負荷量の小さな変数を無視することになり,因子構造の解釈が粗雑になる可能性がある点が指摘されている.
    この危険性を回避するために,クラスター分析が用いられる.SPSSなどの統計解析ソフトでは,階層的クラスター分析とK-means法が一般的には用いられている.しかし,どちらの手法も最終的にいくつのクラスターを「最適解」として抽出するかのアルゴリズムをもたず,分析者が判断せざるをえないため,クラスター化の判断が困難となっていた.
    これらの問題点を回避することができる手法であるKS法クラスター分析を用いて,東京大都市圏と京阪神大都市圏の2大都市圏の構造比較を試みた.無料で提供されている2000年の国勢調査,2001年の事業所・企業統計調査データを用い,東京都千代田区,大阪市中央区から,それぞれ半径70kmに含まれる市区町村(計471市区町村)を対象地域として分析を行った.その結果,東京大都市圏については同じ手法を使用した先行研究と近似した社会地区が析出され,京阪神大都市圏については多核心構造が見出された.KS法クラスター分析は,社会地区分析の標準的な手法の1つとなる可能性をもつと考えられる.
  • 伊藤 美登里
    2008 年 59 巻 2 号 p. 316-330
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    U.ベックは,20世紀後半,とりわけ1970年代以降に顕在化した社会の構造変化を「再帰的近代化」としてとらえる社会学者の一人である.再帰的近代の主要局面として,リスク社会,グローバル化と並び,「個人化」があげられている.本稿では,ベックの個人化論を検討することで,個人化という用語でもって彼がどのような事態を表現しようとしたのか,個人化論の学説史上の意義は何か,個人化は概念として社会学においてどのような機能をもつのかを探る.
    具体的には,まず,ベックの個人化論は,〈一般社会学概念〉としての個人化,〈時代診断〉としての個人化,そして〈規範的要請〉としての個人化の3つに分類可能であること,この3者のうち彼の主要関心事は〈時代診断〉としての個人化にあることを示す.次に,個別科学としての社会学が成立した時期の「個人」ないし「個人化」に比べ,彼の「個人化」においては,社会のさらなる分化の結果,個人は社会との関連づけの度合いが減少し,自己関連づけがより強化されたものとして描かれていることを示す.加えて,ドイツ社会学の実証研究において,個人化論は社会の構造変化にともなって生じた社会と個人の関係の変化,個人のあり方の変化を分析し考察する目的において,「理念型」と同様の機能を果たしうることを指摘する.
  • 有薗 真代
    2008 年 59 巻 2 号 p. 331-348
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,1960年代から70年代の国立ハンセン病療養所において,隔離下に置かれた入所者が集団的に営んできた諸実践の生成・展開を,当時の日本における療養所の状況を踏まえながら検討することにある.入所者たちは,自分たちの生を少しでもよりよいものにするために,仲間どうしでさまざまな試みを行っていた.本稿は,明瞭に組織化された政治運動とも療養所当局の公認下で行われた文化活動とも異なった,こうした流動的かつ非組織的な形態をとる仲間集団での実践に焦点を当てるものである.
    療養所内における仲間集団の実践は,現金収入を得るための場をつくる営みとなって現れた.ただし彼らの実践において獲得されていったのは,単なる対価の獲得や生計の維持といった次元にとどまらず,その実践のプロセスのなかで生み出される多様な生の実現や生の充実化の次元にまで及ぶものであった.彼らの実践は,(1)自分たちで雇用を生み出し,それによって自律的な生活領域を確保すること,(2)「希望」を創出し他者と分有すること,(3)非病者との接点をつくり生活の外延を広げること,といった具体的な様態を帯びていた.構造的制約の多い状況のなかで生を豊穣化しようとする,こうした入所者たちの実践を考察対象とすることで,私たちはハンセン病者の経験世界の新たな領野にふれることができる.
  • 森久 聡
    2008 年 59 巻 2 号 p. 349-368
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    都市空間は,社会過程の所産である一方で社会関係の在り方を規定する条件ともなりうる.本論文は,ある地域社会における都市空間の刷新と存続をめぐる意見対立を切り口に,社会層と政治的表象の空間の関係を読み解いてゆく.対象事例は,福山市・鞆の浦「鞆港保存問題」である.鞆の浦では長い歴史において施政者による港湾整備事業が港湾機能と政治的地位の変動をもたらしてきた.そして現在,鞆港を埋め立てて架橋する公共事業が計画され,その賛否が地域を2分している.本稿は建設派/保存派の各住民が複数の社会層で構成されている点に注目し,社会層と政治的地位,居住区,空間的記憶の相関関係を分析した.
    その結果,(1)建設派は,自らの政治的地位を示す都市空間の実現のために道路計画を支持する地域指導者層と地域共同体の中核的空間が鞆港ではない社会層が中心となること,(2)保存派は,鞆港の空間的記憶の再評価を目指した次世代の地域指導者層,港町としての社会的連帯の空間的基盤を保護しようとした女性・主婦層,鞆港が支えてきた伝統的な政治的地位の維持を志向する旧名望家層によって構成されていること,(3)地域住民は鞆港を政治的地位を表象する空間として捉え,その刷新/存続がもたらす政治的地位の変動が対立点であることを明らかにした.都市空間は空間的記憶を介して現在に生きる人々の実践とその社会的世界を規定しているのである.
  • 田辺 俊介
    2008 年 59 巻 2 号 p. 369-387
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿では「日本人」がどのように世界の国々を見ているのかを実証的に明らかにするために,20ヵ国に対する国別好感度のサーベイデータを用い,認知構造の多元的側面やその世代差を統計的に検討した.
    分析の結果,まず好感度の平均値の序列としては日本を含む西欧諸国への好感度のほうがその他の国々のそれに比べて高いことが示され,先行研究でたびたび指摘される「西高東低」型の存在が確認された.さらに20~34歳,35~49歳,50~64歳,65歳以上で年齢層別に好感度の平均値を比較した.特にロシアについて49歳未満に比べると50歳以上ではその好感度が特に低いことが示され,個別の国に対する好感度には世代差が存在することが明らかになった.
    さらに好感度を一元的序列ではなく多元的な構造として把握するために,個人差多次元尺度構成法を用いた分析を行った.その結果,第1次元として「(日本を含む)欧米先進諸国か否か」という「西高東低」型と重なる次元が抽出され,同時に第2次元として「(否定的)イメージのメディア報道」と解釈できる次元が抽出された.また65歳以上では第1次元を特に重視するのに対し,それ以下の世代では第2次元も好感度の決定に大きな影響を与えていることが明らかとなり,「西高東低」型で安定しているとされてきた日本人の外国好感度の変容可能性が示された.
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