社会学評論
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国立ハンセン病療養所における仲間集団の諸実践
有薗 真代
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2008 年 59 巻 2 号 p. 331-348

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抄録
本稿の目的は,1960年代から70年代の国立ハンセン病療養所において,隔離下に置かれた入所者が集団的に営んできた諸実践の生成・展開を,当時の日本における療養所の状況を踏まえながら検討することにある.入所者たちは,自分たちの生を少しでもよりよいものにするために,仲間どうしでさまざまな試みを行っていた.本稿は,明瞭に組織化された政治運動とも療養所当局の公認下で行われた文化活動とも異なった,こうした流動的かつ非組織的な形態をとる仲間集団での実践に焦点を当てるものである.
療養所内における仲間集団の実践は,現金収入を得るための場をつくる営みとなって現れた.ただし彼らの実践において獲得されていったのは,単なる対価の獲得や生計の維持といった次元にとどまらず,その実践のプロセスのなかで生み出される多様な生の実現や生の充実化の次元にまで及ぶものであった.彼らの実践は,(1)自分たちで雇用を生み出し,それによって自律的な生活領域を確保すること,(2)「希望」を創出し他者と分有すること,(3)非病者との接点をつくり生活の外延を広げること,といった具体的な様態を帯びていた.構造的制約の多い状況のなかで生を豊穣化しようとする,こうした入所者たちの実践を考察対象とすることで,私たちはハンセン病者の経験世界の新たな領野にふれることができる.
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© 2008 日本社会学会
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