社会学評論
Online ISSN : 1884-2755
Print ISSN : 0021-5414
ISSN-L : 0021-5414
特集・階層論の拡大する可能性
現代日本の階層構造の流動性と格差
佐藤 嘉倫
著者情報
キーワード: 社会階層, 流動化, 安定性
ジャーナル フリー

2009 年 59 巻 4 号 p. 632-647

詳細
抄録
現代日本の階層構造について語るとき,「流動化」と「固定化」という2つのキーワードが浮かび上がる.非正規労働者の増加などの流動化と特定階層における世代間移動の固定化がその典型例である.本稿では,相矛盾するように見える2つのキーワードを階層論の視点から統一的に理解・説明できることを示す.すなわち,階層構造の流動化といっても,すべての階層でそれが生じているわけではなく,特定の階層は依然として保護的な制度に守られているが,別の階層は高まる流動性に巻き込まれている.教育,若年層,転職,世代間移動,収入という5つの領域における,2005年社会階層と社会移動研究プロジェクトの研究成果を検討しながら,この仮説が全体として妥当することを示す.最後に,階層構造の安定性と流動化の共存が社会階層論に与える含意について考察する.
著者関連情報
© 2009 日本社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top