社会学評論
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59 巻 , 4 号
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特集・階層論の拡大する可能性
  • 斎藤 友里子, 小林 久高
    2009 年 59 巻 4 号 p. 630-631
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 嘉倫
    2009 年 59 巻 4 号 p. 632-647
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    現代日本の階層構造について語るとき,「流動化」と「固定化」という2つのキーワードが浮かび上がる.非正規労働者の増加などの流動化と特定階層における世代間移動の固定化がその典型例である.本稿では,相矛盾するように見える2つのキーワードを階層論の視点から統一的に理解・説明できることを示す.すなわち,階層構造の流動化といっても,すべての階層でそれが生じているわけではなく,特定の階層は依然として保護的な制度に守られているが,別の階層は高まる流動性に巻き込まれている.教育,若年層,転職,世代間移動,収入という5つの領域における,2005年社会階層と社会移動研究プロジェクトの研究成果を検討しながら,この仮説が全体として妥当することを示す.最後に,階層構造の安定性と流動化の共存が社会階層論に与える含意について考察する.
  • 石田 浩, 三輪 哲
    2009 年 59 巻 4 号 p. 648-662
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿では,世代間の階層移動を分析対象として,戦後日本にみられる長期的趨勢と国際比較の視点からみた日本社会の位置づけという2つのテーマを分析した.第1のテーマについては,社会の流動化の指標である相対移動率に着目すると,戦後日本の長いスパンを通して階層移動はおおむね安定しており,1995年から2005年にかけて日本社会の流動性が下がり階層の固定化が進展したという近年の「格差拡大論」を支持する結果は得られなかった.近年格差に関する関心が飛躍的に強まっているのは,おそらく人々が絶対レベルの移動の変化に反応しているためと考えられる.近年みられる社会の上層レベルでのパイ縮小と上昇移動率の低下,それと対応した下層レベルでのパイ拡大と下降移動率の上昇という変化が背景にあると思われる.
    第2のテーマの国際比較では,1970年代と90年代において日本社会が産業諸国の中でどのように位置づけられるかを検討した.相対移動率に着目すると,日本はどちらの年代でも,流動性がとりわけ大きくも小さくもない社会であることがわかった.全体移動率についてみると,日本は遅れて急速に発展した後発社会の特徴をもち,産業化の進展とともに全体移動率が顕著に増加したことが確認された.本稿では絶対と相対の双方の移動の趨勢を同時に検討することで,それぞれの社会の産業化の進展の軌跡と移動の趨勢の関連を考慮しながら,社会の位置関係を考察した.
  • 有田 伸
    2009 年 59 巻 4 号 p. 663-681
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿は日本・韓国・台湾の各社会において,個人の職業がどのような報酬格差をもたらし,人々の階層的地位をどのように形作っているのかを検討することで,これらの社会の階層構造の輪郭を描き出そうとするものである.本稿では,各社会の労働市場構造の特質やその変動をも視野に入れ,職種や従業上の地位のみならず,企業規模や雇用形態の違いにも着目し,個人の職業に関するこれらの条件が所得と階層帰属意識をどのように規定しているのかを実証的に分析し,それぞれの効果の相対的な重要性を検討する.
    2005年SSM調査データの分析の結果,個人の職業的条件が所得と階層帰属意識に対して及ぼす影響は,大枠では社会間である程度類似している一方,それらの相対的な重要性はかなり異なっていることが示された.台湾では職種の影響が圧倒的に大きいのに対し,日本においては,また部分的には韓国でも,職種のほかに企業規模と雇用形態(非正規雇用か否か)が無視しえない影響を及ぼしている.
    日本の男性の場合,階層帰属意識に対する企業規模や雇用形態効果は,本人所得を統制した場合にも認められ,この効果には長期安定雇用や年功的人事慣行による便益の享受機会なども含まれるものと解釈される.このような結果からは,東アジア,特に日本の階層構造や社会的不平等を考察する際には,労働市場や生活保障に関わる制度的条件への着目が特に重要であることが示唆されている.
  • 近藤 博之, 古田 和久
    2009 年 59 巻 4 号 p. 682-698
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    教育の階層差に関する近年の一般的な見方は,教育拡大にもかかわらず不平等が長期にわたり継続しているとするものである.本稿では,戦後の日本社会の教育格差の趨勢とそこに働いているメカニズムを,順序ロジット・モデル(とくに部分的比例オッズ・モデル)を用いて分析した.2005年SSM調査データから,父職・親学歴・財所有の3つの説明変数を構成して吟味した結果,(1)高度経済成長期以降の進学となる中年コーホートで明らかに格差縮小が進んだこと,(2)1980年代後半以降の進学者からなる若年コーホートで親学歴に局所的な格差拡大の動きが生じているものの,財所有の効果は一貫して低下しており,父職の効果もコーホートを通してそれほど変化していないことが明らかとなった.これより,大局的および長期的に格差縮小が進んできたことが確認された.さらに,代表的な格差生成メカニズムとして相対的リスク回避(relative risk aversion: RRA)説を取り上げ,その解釈が日本のデータにあてはまるかどうかを,仮説が成立するための必要条件を定式化して検証した.その結果,(3)親学歴ついてはRRA仮説の予想と一致する効果パターンが得られるものの,父職の効果についてはRRA仮説の予想と一致しないことが明らかとなった.このことから,日本の場合は世代間職業移動を前提にした相対的リスク回避説が妥当しないと結論づけられた.
  • 中井 美樹
    2009 年 59 巻 4 号 p. 699-715
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,性別役割分業と結びついたライフコースの特徴と職業の諸側面がどのように人々の権力・権限ある地位へのアクセスに影響しているかを,社会階層と社会移動の全国調査(SSM)データの分析により明らかにした.女性はもっぱら家庭との役割調整を行いながら断続的な就業パターンをとるという制度化されたライフコースは今なお優勢であり,女性の職業キャリア中断/継続の要因のイベントヒストリー分析からは,高学歴女性が必ずしもフルタイム継続しないことや若年女性の雇用流動化の傾向が示された.子どもや高安定高報酬の夫の存在といった家族要因もまた女性を無職化に導くことが確認された.また男性と女性がいかなる性構成の職業的文脈において昇進可能性が高まるのかを検討した結果,女性は男性職および女性職にフルタイム継続就業している場合に権限ある地位に接近しやすい傾向が明らかになった.ただし男性がマイノリティである職域でもむしろそれら少数の男性に権限への接近が有利な傾向がある.さらに,男性は同じ勤務先での就業経験が長いほど,高学歴ほど管理的地位に到達しやすい一方で,女性は自身の人的資本が職務権限への接近にほとんど意味を有しない.分析結果から,ライフコース的視座を組み込んだ職業政策の必要性が示唆される.
  • 三隅 一人
    2009 年 59 巻 4 号 p. 716-733
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿は,社会関係資本のSSM的な階層研究への導入に際して突きあたる原理問題を,機会の平等に照らして考察する.まず,社会関係資本を導入した階層研究の展開をおさえつつ,その導入が改めて問いかける労働市場と社会構造との関係に関わる原理問題を確認する.機能主義階層論のコトバでいえば,それは社会関係資本が抱え込む機会の平等(それが指標する労働市場の機能性)に照らした両義性の問題である.階層研究に求められるのはその両義性をそれとして分析し,社会関係にもとづく機会の平等を語るためのコトバである.本稿ではこの問題にアプローチする例解を思考実験的に示す.それは,当該の社会が初職入職をもっぱら社会関係資本に依存すると仮定した場合,そこでの機会の平等はいかなるものか,そしてそれはどういう階層性を帯びて表れるのか,という思考実験である.また,この思考実験を比較階層文化論の準拠枠に展開する目論見から,国際比較を試みる.2005年SSMの日本・韓国・台湾の調査データでみると,友人先輩関係資本および台湾における家族親戚関係資本は,それへの依存が必ずしも機会の平等を損なうものではないことが示される.また,そこでの移動パターンは,そもそもの学歴バイアスや産業構造の成熟度を反映して国ごとに違いを呈しつつも,それぞれに一定のホワイトカラー階層を生成する力を秘めている.
  • 佐藤 俊樹
    2009 年 59 巻 4 号 p. 734-751
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    階層帰属の定義は主観と客観の間をゆれ動いてきた.ここでは,そのどちらも前提にせず,SSMデータにもとづいて,階層帰属とはどんな変数なのかを再検討する.2005年調査では,「上/中/下」帰属が質問文の順番に左右されない客観性をもつ.また,本人収入による「上/中/下」帰属の分布の乖離はさらに拡大したが,その一方で,「1-10」帰属は「5」に集中する形にかわっており,分化と斉一性の二重性という特徴が見られる.
    階層帰属は当事者カテゴリーとしての「上/中/下」を準拠枠として,自らの階層的リアリティを位置づけたものと考えられる.いわば階層的社会の見え姿であり,それ自体が現代の自省的階層社会の一部となっている.それゆえ,階層帰属の分析は,現代社会学や理論社会学の研究にとっても重要な事例になる.
投稿論文
  • 石田 淳
    2009 年 59 巻 4 号 p. 752-768
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    分配原理についての規範的研究は,近年社会学においても注目を集めるようになった.これらの規範的な議論に対して経験科学を出発点とする社会学がなしうる貢献の1つの形として,ある分配原理を現実に適用した際に生じるさまざまな社会的影響を,社会調査データをもとにして見積もる,という方向性がありうる.本研究はこのような基本的なアイデアのもと,仮想的な所得再分配によって,人々の主観的幸福,そして主観的幸福の社会的総和がどのように変化するかを,2005年SSM調査データを用いてシミュレーション分析することを目的とする.本稿では平等主義の観点に立って,段階的に完全平等へと分配を変化させるという再分配方法を採用し,平等化の度合いによる幸福総和(平均)の挙動を分析する.このために,各個人・世帯のプロフィールに応じて,所得を独立変数とする主観的幸福(生活満足得点)関数を調査データから推定し,次にこれをもとに所得再分配後の主観的幸福の変化を予測する.
    結果として以下の知見が得られた.第1に,個人所得,世帯所得いずれを対象にした場合も,段階的平等化所得再分配の平均幸福への効果は限定的である.第2に,平等化をある程度進めたところで平均幸福改善効果に飽和点が見られた.このことは,効率的に幸福を高めることを目的とする場合は,適度な平等分配が効果的であることを示唆している.
  • 坂田 勝彦
    2009 年 59 巻 4 号 p. 769-786
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿は,国立ハンセン病療養所「多磨全生園」入所者による「ふるさとの森」作りの取り組みを検討することで,戦後日本社会の変化を生きるなかで彼らがいかなる実践を通して関係性や生の意味を模索してきたか明らかにする.近代以降の日本においては国民国家の形成過程を通して,ハンセン病者を健康者から弁別し,療養所へ収容する隔離政策が進められ,1996年まで約1世紀にわたり続けられた.
    他方でハンセン病療養所を取り巻く状況は,多磨全生園の場合,戦後日本社会で進む都市化の影響などによって大きく変化した。それまで自明だった日常が解体される状況に直面するなか,全生園入所者にとって,自らが生きる現実の意味を新たに構成することが重要な問題となった.
    1970年代半ば以降,全生園入所者は「ふるさとの森」作りの取り組みを通して,療養所内外の他者と関係を再構築することを試みた.この取り組みを進めるなかで彼らは,隔離政策が付与した「ふるさとに帰ることができない」存在という意味づけに代わる,「第2のふるさとを作り上げてきた」存在という新たな生の意味を模索した.この取り組みとその軌跡からは,ハンセン病者が経験した喪失と生存の有様とともに,彼らが構成してきた意味世界の変容が明らかになる.
  • 中澤 高師
    2009 年 59 巻 4 号 p. 787-804
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,廃棄物処理施設立地をめぐる紛争事例の比較・分析を通じて,受益圏・受苦圏論に新たな分析枠組みを提示することである.従来,受益圏・受苦圏論は対象となるある1つの開発や施設がもたらす受益・受苦の構造のみを問題としてきた.しかし,柏市第二清掃工場建設問題においては事前的受苦圏と事後的受苦圏の対立が生じており,構造解明のためには,問題がそのうえに生起する既存の受益・受苦配置との関係から構造を捉える必要がある.本稿では日の出町第二処分場との比較から,既存の受苦圏とは異なる主体・圏域が受苦を分担する形で引き起こされる「受苦分担型」と,既存の受苦圏と同一の主体・圏域が受苦を重複して被る形で引き起こされる「受苦重複型」という2類型を提示し,紛争形態の相違について論じる.
    「受苦分担型」の紛争である柏市第二清掃工場建設問題においては,施設の建設は既存の受苦の軽減という「配分的公正」の論理を帯びており,そのため反対運動の論理は「手続き的公正」を前面に押し出したものとなった.これに対して,「受苦重複型」である日の出町第二処分場をめぐる紛争においては,反対運動の「配分的公正」を求める論理が正当性をもった.また,柏市においては施設の「必要性」を疑問視する議論は「南北の負担の公平」という論理と衝突したのに対し,日の出町においては受苦の「配分的公正」を求める議論が,施設の「必要性」自体を突き崩していく論理を内包していた.
  • 小林 伸行
    2009 年 59 巻 4 号 p. 805-820
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,N. ルーマンの教育システム論を他の機能システム論と比較可能な「特殊でない」機能システム論へと再構築することである.
    ルーマンの教育システム論が他の機能システム論との比較可能性を損なっている要因は複数ある.包摂がすべての個人に及んでいない,固有メディアや二分コードを欠いたまま機能システムとしての自律性などが説明されてきた,コードとプログラムが明確に区別されない等である.本稿では,その淵源を主に「学校(教育)」に偏向した説明に求めつつ,そうした説明からの脱却を通じて他の機能システム論との比較可能性を教育システム論に付与するとともに,社会システム論全体の一貫した説明力を向上させる可能性を模索する.
    そのために,教育システムのメディアを「ライフコース」から〈能力〉に,形式を「知識」から「手本/模範」に変更し,二分コードを「有能/無能」とすることを提案する.また,相対評価にも絶対評価にも変更されうるような従来の「選抜コード」を,有能か無能かの判断基準となる可変的なプログラムの一環として位置づけ直し,「有能/無能」コードとともに学習者だけでなく教育者にも向けられるものと見なしたうえで,教育システムの機能を「何かが〈できない〉ために諸人格の参入が不可能であるとの判断を延期させ,いずれ〈できる〉ようになって包摂が可能になると予期を変質させること」すなわち「包摂不可能性の認知的予期化」と規定する.
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