社会学評論
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特集:グローバリゼーション再考
再生産労働のグローバル化の新たな展開
フィリピンから見る「技能化」傾向からの考察
小ヶ谷 千穂
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2009 年 60 巻 3 号 p. 364-378

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抄録

グローバリゼーションを「時間と空間の圧縮」と考えるとき,人の国際移動はその「圧縮」のひずみやねじれを観察するうえでの1つのバロメータとされてきた.金やモノの移動に比べて,もっとも「動きにくい」とされる「ヒト」の移動は,グローバリゼーションの中での「国民国家」の境界を揺るがすと同時にそれを再構築する動機づけともなってきている.中でもアジアを中心に見られる「移動の女性化(feminization of migration)」は,グローバリゼーションの多元性――国家,市場,世帯の境界の再編成とそこでのジェンダー関係の再編成――を端的に指示している.「再生産労働の国際分業(division of reproductivelabor)」「ケア・チェイン」といった分析枠組みが提出されてきた中,2000年代に入って,さらに再生産労働部門における国際移動が,国家・市場・世帯のせめぎ合う「グローバル・サーキット」(Sassen 2002)の中で,新たに「技能化」という傾向をもつようになってきているのではないか.本稿では,こうした問題関心に基づき,アジアにおける女性の国際労働移動の諸相から,グローバリゼーションについて再考する契機としたい.

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© 2009 日本社会学会
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