社会学評論
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Breen and Goldthorpeの相対的リスク回避仮説の検証
父親の子どもに対する職業・教育期待を用いた計量分析
藤原 翔
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2011 年 62 巻 1 号 p. 18-35

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抄録

本稿の目的は,Breen and Goldthorpe(1997)の教育達成の階級・階層間格差に関する理論を取り上げ,その中心となる相対的リスク回避仮説の日本社会における妥当性を検証することである.
相対的リスク回避仮説によれば,子どもとその親は,子どもが少なくとも親と同程度の階級・階層に到達することを期待し,そのために必要とされる学歴を取得しようとする.その結果,出身階級・階層によって目標とする教育達成の水準が異なり,教育達成の階級・階層間格差が生じるのである.この仮説を検証するため,パネルデータを用いて計量分析を行った結果,(1)父親の職業は父親が子どもに期待する職業に影響を与えていること,(2)父親が子どもに期待する職業は父親が子どもに期待する教育に影響を与えていること,(3)父親が子どもに期待する教育は子どもの教育達成に影響を与えていることが示された.しかし,子どもへの教育期待の形成に対する父親の職業の影響を,子どもへの職業期待は大きく媒介しておらず,また,教育達成に対する父親の職業の影響を子どもに対する教育期待は大きく媒介してはおらず,これらの期待の効果は付加的なものであった.
これらの結果から相対的リスク回避が教育達成の階級・階層間格差を説明するうえで中心的な役割を果たすという彼らの主張は支持されず,相対的リスク回避仮説は支持されなかった.

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© 2011 日本社会学会
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