社会学評論
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日・独・米における学校トラックと進学期待・職業期待
学校と職業の接続に着目して
多喜 弘文
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2011 年 62 巻 2 号 p. 136-152

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抄録

本稿の目的は, 生徒の進学期待・職業期待と学校トラックの関連のあり方の日本的特徴を検討することである. そのための比較対象として, 学校と職業の結びつき方において典型的な特徴をもつとされてきたアメリカとドイツをとりあげる. 分析には, 各国の教育機関に通う15歳の生徒を調査対象にしたOECDのPISAデータを用いる.
先行研究で使われてきた3つの指標を用いると, 3国の学校と職業の接続のあり方は以下のように整理することができる. 日本は, 学校による階層化の度合いが大きく, 国内で標準化されている度合いも大きいが, 学校と職業資格や技能との結びつきの度合いは小さい. ドイツは, 3つの指標の度合いが一貫して大きく, アメリカは一貫して小さい. 以上の指標の組み合わせから, 各国のトラックが進学期待と職業期待に対してもつ影響力に関する仮説を立て, それを検討した.
分析結果は以下のとおりである. ドイツではトラックが進学期待と職業期待を強く規定しているが, アメリカではこれらに対するトラックの規定力は弱い. これに対し, 日本では所属するトラックが進学期待を強く規定するが, 職業期待とは弱い関連しかもたない. 以上の分析結果は, それぞれの国の学校と職業の結びつきに関する3つの指標のパターンと整合的に解釈できるものであり, 学校と職業の接続を背景としたトラックが生徒のアスピレーション形成に及ぼす影響の日本的特徴が明らかになった.

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© 2011 日本社会学会
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