社会学評論
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特集・都市社会研究の新たなパラダイムのために
国家のリスケーリングと都市のガバナンス
「平成の大合併」の地方政治を例に
丸山 真央
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2012 年 62 巻 4 号 p. 476-488

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抄録
2000年代以降, 都市研究で「国家のリスケーリング」論が影響力をもつようになっている. これは, グローバルやリージョナルな経済・政治統合が進むなかで国家諸機構の機能や影響力がその地理的スケール上の編成を変化させることに注目し, 都市やそのガバナンスの変化との関連を明らかにするものである. 「都市」は, 従来の都市研究でしばしば所与の空間的単位とみなされてきたが, 「地理的スケール上の編成の変化 (リスケーリング)」という発想を採り入れることで, それが資本や国家のスケール的編成と相互規定的に生産される地理的スケールのひとつであり, それゆえ今日, 「都市」というスケールをどう定義するかということそれ自体が「スケールの政治」の争点になっていることが明らかになる. 本稿では, この視角による都市研究の基本的な問題構制と成果を整理し, グローバル化とネオリベラリズムのもとでの都市ガバナンスの変化を捉えるのに有益であることを示す. そのうえで「平成の大合併」をめぐる地方都市の事例の簡単な分析を行う. 基礎自治体の合併は, 既存の「地域/都市」スケールのガバナンスを担う政治行政機構を再編して, 新たな「地域/都市」スケールでガバナンスを組織しなおす「国家のリスケーリング」のひとつだが, 事例分析から, 日本でこれがどのような政治経済的な力学で進められたのかを明らかにする. あわせてこの視角による都市研究の課題を引き出し整理する.
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© 2012 日本社会学会
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