社会学評論
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鈴木榮太郎における「自然」と「行政」
「地域自治の社会学」のための予備的考察
山崎 仁朗
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2012 年 63 巻 3 号 p. 424-438

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抄録

鈴木榮太郎は, 『日本農村社会学原理』において, ミクロな相互行為の次元から全体社会を捉える高田保馬の見方から示唆を得て, 自然村論を展開した. これは, 自らの多元的国家論の立場とも符合した. しかし, 晩年に「国民社会学」を構想するようになると, かつて依拠した高田の全体社会論や多元的国家論を批判し, 国家権力による統治活動こそが社会的統一を創り出すという認識に至った. これにより, 鈴木は, 聚落社会一般を権力の視点から捉え直すことになり, 聚落社会の発生にとって, むしろ「行政」が本質的な契機であり, 行政的集団が自然的集団に転化して質的な変容を遂げるという動態的な見方にたどり着いた. 晩年の鈴木が獲得したこの視座は, 「自然」と「行政」とを二項対立的に捉え, もっぱら前者を強調する従来の見方に修正を迫るものであり, 「コミュニティの制度化」によって地域コミュニティの自治をどう保障するかという課題設定に, 理論的な根拠を与える. 今後は, このような視座に立って, 国際比較の視点も取り入れながら「地域自治の社会学」を追究する必要がある.

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© 2012 日本社会学会
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