社会学評論
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63 巻 , 3 号
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投稿論文
  • 後藤 実
    2012 年 63 巻 3 号 p. 324-340
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/02/10
    ジャーナル フリー
    とくに1990年代以降, 多様な分野で社会的排除に関する研究が活性化し, 分析の視座が揃いつつある. そして, 「排除から包摂へ」という方向性が提示されている.
    本稿では, 社会システム理論に依拠することで, 包括的に近代社会における包摂/排除の形成を考察し, 社会政策学的な関心から行われている研究の不備を補う. そこで, 社会システム理論の観点から包摂問題を論じたT. パーソンズとN. ルーマンの理論を検討する. 両者の議論の吟味を経て, 機能分化した近代社会は, 包摂原理 (形式上の包摂原理) によって存立しており, そのもとで, 組織が排除・選抜を行うことで, 集合的な成果を確保し, 存続していること (作動上の包摂原理) が明らかとなる.
    ルーマンは, 排除を主題化しつつ, パーソンズ理論の不備, 欠点に対処した. とはいえ, 作動上の論理に即して包摂/排除と平等/不平等とを直接的に関連づけていないという問題点がルーマンの議論に関して指摘できる. そこで本稿では, 機能としての平等/不平等の区別に着目したうえで, 排除のコミュニケーションを問題化し, これが包摂/排除の調整 (調整上の包摂原理) に関与することを近代における包摂原理の複数性に即して考える.
    近代社会は, 形式上の包摂原理を参照して, 作動上の包摂原理を反省し, 存続に関わる包摂/排除を調整することで, 持続可能性を強化すると最終的に結論づける.
  • 須永 将史
    2012 年 63 巻 3 号 p. 341-358
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/02/10
    ジャーナル フリー
    ジュディス・バトラーの身体へのアプローチにはどのような意義があるのだろうか. 本稿ではまず, 『ジェンダー・トラブル』におけるバトラーの身体へのアプローチに, 重要な側面が3つあることを指摘する. それは, 第1に, ジェンダー概念の再定義がなされていることであり, 第2に, 身体論の主要な論点を「身体なるもの (=The body)」という論点から「個々の身体 (=bodies)」という論点へと移行させようとしていることだ. そして第3の側面は, 「身体なるもの」の「内部/外部」の境界が不確定であるという主張がなされていることである.
    次に, フェミニズム/ジェンダー論にとっての既存の身体観を整理し, バトラーが各論者の身体観をどのように批判し, どのように乗り越えようとしたかを述べる. バトラーはボーヴォワールの議論が精神/身体の二元論を保持していることを批判し, イリガライの議論が生物学的性差としてのオス, メスの二元論を保持していることを批判する. バトラーのアプローチによると, 2人が保持するそうした二元論自体が, 問題視されるべきなのである.
    本稿では, バトラーの貢献とは次のようなものだと結論する. それはすなわち, ジェンダーという概念を再定義することによって, 人々を異性愛の基準においてのみ首尾一貫させる現象の水準を指摘しようとしたことだ. また本稿では, <ジェンダー>を実証的に明らかにするためには, 実際の社会において使用される身体や行為を記述することがフェミニズム/ジェンダー論の今後の課題であることも示唆する.
  • 林 拓也
    2012 年 63 巻 3 号 p. 359-375
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/02/10
    ジャーナル フリー
    職業アスピレーションは, 職業達成のプロセスに関わる社会心理的な媒介要因として位置づけられる志向である. 近年の日本の状況を扱った実証研究によると, それが達成プロセスと遊離しつつあるということが示唆されているが, こうした結果については慎重な検討を要する. アスピレーションの測定に際して, 「地位」の優位性と一次元性が前提とされているためである. そこで本稿では, 職業の一次元的な「地位」に限定されない, 職業間の「類似性」に着目するアプローチから職業志向を導出し, それに基づいてアスピレーションについての再検討を加えていく. 分析に用いたデータは, 2008年に東京23区在住の25~39歳男性雇用者を対象とした調査により得られたものである. このデータに対し, 職業間類似度に基づく認知構造の析出, その構造における職業選好の方向, そして志向と達成プロセスとの連動について段階的な分析を展開した. 認知特性の次元としては, 「安定的地位」「組織/技能」「裁量」が析出され, 個々人の選好データに基づいてそれらに対する志向が計測された. また, 各志向が回答者自身の職業など客観的属性と関連していることから, 達成プロセスとの連動も確認された. そのうえで, これまでのアスピレーション研究との接合や今後の課題について議論を展開した.
  • 古市 憲寿
    2012 年 63 巻 3 号 p. 376-390
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/02/10
    ジャーナル フリー
    本稿は, 1990年代後半以降に政府や経済界から提出された「起業」や「起業家」像の検討を通して, 日本の社会秩序が「起業」や「起業家」をどう規定し, 受け入れてきたのかを分析するものである.
    バブル経済が崩壊し日本型経営が見直しを迫られる中で, 「起業家」は日本経済の救世主として政財界から希求されたものだった. しかし, 一連の起業を推奨する言説にはあるアイロニーがある. それは, 自由意志と自己責任を強調し, 一人ひとりが独立自尊の精神を持った起業家になれと勧めるにもかかわらず, それが語られるコンテクストは必ず「日本経済の再生」や「わが国の活性化」などという国家的なものであったという点である. 自分の利益を追求し, 自分で自分の成功を規定するような者は「起業家」と呼ばれず, 「起業家」とはあくまでも「日本経済に貢献」する「経済の起爆剤」でなければならないのである. さらに, 若年雇用問題が社会問題化すると, 起業には雇用創出の役割までが期待されるようになった.
    1999年の中小企業基本法の改正まで, 日本の中小企業政策は「二重構造」論の強い影響下, 中小企業の「近代化」や大企業との「格差是正」を目指すという社会政策的側面が強かった. その意味で, 起業家に自己責任と日本経済への貢献を同時に要求する理念は, 1990年代後半以降の時代特殊的なものと言える.
  • 宮本 結佳
    2012 年 63 巻 3 号 p. 391-407
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/02/10
    ジャーナル フリー
    近年, 過疎等多くの問題を抱えた農山漁村において, 観光への取り組みが活発化している. 先行研究においてこれまで明らかにすべき問題として残されてきたのは, 第1に「来訪者とのいかなる相互作用によって住民は認識を転換し, 主体的な対応を生起させるのか」, 第2に「アクター間の関わりの結果, いったいどのような資源が新たに生成されるのか」の2点である. 本稿では, 現代アートを媒介として地域の環境を保全し, それらの資源を生かした観光に取り組んでいる香川県直島の事例を通じ, この問いについて検討した.
    第1の問いに対して分析を通じて明らかになったのは, 相互作用を通じて来訪者のまなざしを知り, 観光における有力な資源を自らがコントロールしえるという状況を認識してはじめて, 住民の側の主体的な対応が生起するという事実である. さらに, 第2の問いに対して分析を通じて明らかになったのは, 観光という場における相互作用を通じて, 住民は地域表象を創出させ, 新たな資源を生成しているという事実である.
    地域に存在する資源を生かした観光を対象とした研究のなかでは「観光という場のなかで住民の主体的な対処はいかにして可能となるのか」に関心が寄せられてきた. これに対し, 本稿の事例が提示するインプリケーションは, 住民が相互作用による認識転換をベースに, 地域表象の創出という新たな資源生成を通じて, 主体性を確保する可能性の存在である.
  • 流王 貴義
    2012 年 63 巻 3 号 p. 408-423
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/02/10
    ジャーナル フリー
    『社会分業論』にてデュルケムは有機的連帯という社会統合の概念を提示している. この連帯概念の特徴は, 集合意識に基づく機械的連帯とは異なり, 社会的分化を許容している点に存する. しかし社会統合の概念である以上, 有機的連帯は個々人の自己利益にのみ基づく経済的な関係から区別されるべきであり, その基礎となる契約関係も当事者間の合意に還元はできない性質を持っている. 「契約における非契約的要素」とは, 経済学的な契約観に対するデュルケムの批判をパーソンズが定式化したものである.
    しかし「契約における非契約的要素」とは具体的に何を指しているのか. 有機的連帯に固有の統合メカニズムの特定に重要となる論点であるにもかかわらず, デュルケム研究者の間でも見解が分かれている. 集合意識を指しているのか, 人格崇拝なのか, 社会の非合理的基礎なのか, それとも社会に由来する強制力を意味しているのか. 本稿は「契約における非契約要素」とは契約法である, との解釈を提示する.
    契約法の役割は, 契約当事者間の権利義務を定め, 有機的連帯の安定を可能にする, という法の執行のみに留まらない. 契約関係における調和の維持という積極的な役割も契約法は担っている. 合意が契約として法的保護を受けるためには, 法により定められた条件を満たす必要があるが, デュルケムはこの条件を調和的な協働が維持されるための条件として理論的に読み替えるのである.
  • 山崎 仁朗
    2012 年 63 巻 3 号 p. 424-438
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/02/10
    ジャーナル フリー
    鈴木榮太郎は, 『日本農村社会学原理』において, ミクロな相互行為の次元から全体社会を捉える高田保馬の見方から示唆を得て, 自然村論を展開した. これは, 自らの多元的国家論の立場とも符合した. しかし, 晩年に「国民社会学」を構想するようになると, かつて依拠した高田の全体社会論や多元的国家論を批判し, 国家権力による統治活動こそが社会的統一を創り出すという認識に至った. これにより, 鈴木は, 聚落社会一般を権力の視点から捉え直すことになり, 聚落社会の発生にとって, むしろ「行政」が本質的な契機であり, 行政的集団が自然的集団に転化して質的な変容を遂げるという動態的な見方にたどり着いた. 晩年の鈴木が獲得したこの視座は, 「自然」と「行政」とを二項対立的に捉え, もっぱら前者を強調する従来の見方に修正を迫るものであり, 「コミュニティの制度化」によって地域コミュニティの自治をどう保障するかという課題設定に, 理論的な根拠を与える. 今後は, このような視座に立って, 国際比較の視点も取り入れながら「地域自治の社会学」を追究する必要がある.
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