社会学評論
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日本における外国人の移住過程がその出生率に及ぼす影響について
是川 夕
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2013 年 64 巻 1 号 p. 109-127

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抄録

外国人人口の増加は, 1990年代以降の日本における, 戦後日本の社会の構造変化を象徴する出来事であり, これまで多くの研究が行われてきた分野であるものの, 外国人女性の出生行動について行われた研究は, 思いのほか少ない. しかし, 出生行動は現地社会と結びつきの強い「移民2世」を生み出すなど, 移民の定住化の方向性を左右する重要な契機であり, 外国人人口の日本社会への定住化が進む現在, こうした点について明らかにすることは重要である.
本稿では, これまで欧米の先行研究が明らかにしてきたように, 移住過程, とくに定住化が外国人女性の出生動向に与える影響について分析を行った. その結果, 外国人女性の出生行動は, 同一国籍内でもサブグループ間で大きく異なる可能性が高いこと, および定住化に伴う適応/同化効果が出生力にプラスの影響を与える可能性が示されたといえよう. また, 日本における外国人の定住化が, 世代の再生産という新たな局面に入っていくことが示されたといえよう.
こうした結果は, マクロ統計から得られた知見であり, 今後, ミクロデータを利用したサブグループ間の出生力格差や, 定住化の影響の違いを明らかにする必要があるだろう. その一方で, 本稿の研究はこれまでこうした分野における知見が少なかった中, 今後の調査研究の作業仮説となる重要な知見を提供したものと考えられる.

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© 2013 日本社会学会
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