社会学評論
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戦後国際協力の担い手の連続性とその意味世界の変容
‹海外移住事業団出身› JICA元職員へのインタビューから
崔 ミンギョン
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2013 年 64 巻 1 号 p. 2-19

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抄録

本稿では ‹海外移住事業団 (以下, JEMIS) 出身› JICA元職員のインタビューをもとに戦後国際協力の担い手の連続性とその意味世界の変容のあり方を考察する. ここから高度経済成長期の社会変動の中, ‹外› と出会い, ときにはそこに自らが位置しながら, 日本という ‹内› の劇的な変化を経験することで, ‹内› からではなく, ‹外› から ‹内› を絶えず意識した社会集団のナショナルな認識を明らかにする. 本稿は社会全体を包含する ‹1つの› ナショナル・アイデンティティに焦点をあてるマクロな視点に批判的な立場からさまざまな属性や経験をもつそれぞれの社会集団によって多元的に再構築されたナショナルな認識の1つとして ‹JEMIS出身› JICA元職員の語りを捉える. インタビュイーは高度経済成長初期, まだ日本からの海外移動が大きく限られていた中, 移住事業に従事することで海外との繋がりをもち, 長年の海外勤務を行う. さらに彼らはその後, 国際協力関連行政組織の再編の中, ‹移住畑› の国際協力の担い手として斜陽化する移住とそのかわりに浮上してきた国際協力, 両者に関わることで固有のナショナルな認識を繰り広げることになるのだ. それは戦後日本における国際協力や海外移動, 国際化など, 国際的であるさまざまな事象の歴史的な理解に基づくものとしての特徴をもつ.

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© 2013 日本社会学会
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