社会学評論
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住民運動の地政学的分析
清原 悠
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2013 年 64 巻 2 号 p. 205-223

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抄録

本稿の目的は, 1966年から81年にかけて展開した横浜新貨物線反対運動を事例に, 住民運動がいかなる地域環境において立ち上がってくるかを, 人口動態, 保守/革新の両者の地縁組織のあり方, 居住環境の整備のされ方から検討することである. そのなかで明らかにしたことは, 住民運動という概念は運動の当事者によって自らの運動を名指すべく使われた語彙であり, 他の社会運動概念と異なり分析概念ではなく当事者概念であったという点である. 住民運動という概念の最も早い使用は60年代の横浜であり, 当時の横浜は人口流入が激しく, 住民たちは政治的志向において保守から革新まで含んでおり, このなかで運動を構成していくためには, 保守/革新からは距離をおいた運動表象が必要であったのである. また, 住民運動概念は革新側が新住民を自らの政治的資源として動員するべく使用し始めたのであるが, 革新自治体であった横浜市と対立した横浜新貨物線反対運動がそれを内在的に批判し, 換骨奪胎して革新勢力から自立した運動を展開するものとして転用したものであった. そして, 革新側から自立した運動を展開できたか否かは地域環境の整備のあり方に関係があり, 大規模団地造営がなされた地区においては, そこに目を付けた革新勢力によって事前に革新勢力の地域ネットワークが構成されており, このような地区が後に反対運動から離脱することになった点を明らかにした.

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© 2013 日本社会学会
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