社会学評論
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特集・東日本大震災・福島第一原発事故を読み解く
原発避難者を取り巻く問題の構造
タウンミーティング事業の取り組み・支援活動からみえてきたこと
佐藤 彰彦
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2013 年 64 巻 3 号 p. 439-459

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抄録
社会学広域避難研究会富岡班では2011年秋から, 東京電力福島第一原発事故に伴い避難を余儀なくされた福島県富岡町民への聞き取り調査を進めてきた. その後, 当事者団体が実施するタウンミーティング事業を中心とした支援にかかわるなかで, おもに次のことが明らかになってきた. (1)避難者が抱える問題はきわめて広範かつ複雑であること, (2)しかしながら, こうした問題が政策の現場では正確に認識されていないこと, (3)そのため, 現行の政策が必ずしも十分な被災者救済に繋がっていないこと, (4)一方で, 地域復興に向けた政治的決定が急速に進み, 原発避難者 (以下, 強調箇所以外では「避難者」という) が抱える問題は深刻化の一途を辿っていること, (5)その背後には地方自治を取り巻くわが国の法制度と, (6)問題の深刻化を後押しする世論の存在を否定できないこと.
これらは, 現行の復興政策が据えている前提 (早期帰還と原地復興) と避難者が直面している問題 (生活再建と長期スパンでの帰還) との間の乖離故に生じており, このままでは現行政策の破綻, あるいは, 避難元自治体の消滅すら現実に起こる可能性もある. この状況を改善するためには, 避難元自治体のコミュニティの維持・存続, そこから町行政を通じた政策過程への回路, 世代や家族のライフスタイルを考慮した長期政策が必要である.
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© 2013 日本社会学会
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