社会学評論
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特集号・社会学は政策形成にいかに貢献しうるか
日本における「移民社会学」の移民政策にたいする貢献度
駒井 洋
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2015 年 66 巻 2 号 p. 188-203

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抄録

本稿は, 日本に滞在する外国人移民を対象とする1980年代後半以降の主要な社会学的実証研究が, 日本の移民政策にたいしてどのような貢献をしたか, あるいはできなかったかを検討することを課題とする.
日本の移民政策は, 1990年に改定施行された「出入国管理および難民認定法」により基本的方向が定められたので, 「90年体制」と呼ばれることが多い. この体制のもとでは, 移民管理政策ばかりがひとり歩きし, 包括的な移民統合政策はほとんど存在していない.
90年体制は, 日系人と研修生・技能実習生を労働力として活用する道を開いた. また, いわゆる「単純労働者」は受けいれないとしたため, 非正規に滞在する外国人労働者が激増した. このような状況に対応して, 移民の社会学的研究の関心が向けられた主要な領域は, 外国人労働者の就労と生活, 移民の集住と地域社会研究, 移民のエスニック集団ごとの個別的適応様態, 移民第2世代の教育問題, 移民にたいする政治的権利の付与という5つに集約することができる.
移民の社会学的研究あるいは研究者による, 非正規滞在者の部分的救済や地域的対応ないし自治体の外国人政策にたいする積極的寄与などの貢献はあった. しかしながら, 包括的な移民統合政策への道をどのように打開するかという社会学者の展望はほとんど開けていない.

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© 2015 日本社会学会
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