社会学評論
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特集号・社会学は政策形成にいかに貢献しうるか
環境・財政に関わる政府の失敗
負担問題の解決と社会学の役割
湯浅 陽一
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キーワード: 負担分配, 公共圏, 負の遺産
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2015 年 66 巻 2 号 p. 242-259

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抄録

政策の形成によって解決されるべき課題として「負担の分配」を取り上げ, 社会学がいかなるかたちで貢献できるのかを論じる. 負担は, 利得の発生に不可避的に付随して生じるものであり, いずれかの主体が何らかのかたちで引き受ける (=分配される) ことによって処理されなければならない. 分配にあたっては, 公平さと, それを担保するためのルールが公正な手続きによって形成されることが重要となる. 公正なルール形成をめぐる討論は, 社会システムの影響を受ける. 本稿では, 受益圏・受苦圏, 経営システム・支配システム, 公共圏・アリーナ, 合理性・道理性の諸概念を用いながら, 整備新幹線建設, 旧国鉄債務処理, 高レベル放射性廃棄物処理問題の各事例でのルール形成を分析した. その結果, 経営システムと支配システムの逆連動による負担の転嫁について, 「溶かし込み」や「転換」といった型が見られること, 公共圏の設計図が明確でないこと, 地方財政制度が2つのシステムの逆連動に促進的に作用していることなどが明らかとなった. さらに現在では, われわれ自身が負担を先送りされた将来世代になりつつあり, 受益と受苦の関係から公平な負担分配を考えることが困難な「負の遺産」の処理に直面していることも指摘した. これらの課題は, 社会学的な知見に基づきながら, より強固な公共圏を構築することで対処されなければならない.

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© 2015 日本社会学会
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