社会学評論
Online ISSN : 1884-2755
Print ISSN : 0021-5414
ISSN-L : 0021-5414
特集号・テキストマイニングをめぐる方法論とメタ方法論
近世英国におけるSocietyの形成
テキストマイニングによる分析
左古 輝人
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 68 巻 3 号 p. 368-385

詳細
抄録

本稿は16・17世紀の英語におけるsocietyの概念をテキストマイニングにより解明する. 当時の政治的著述群から作成したコーパスの分析により, 以下の諸点を明らかにした.

まず, 近世英語にとりsocietyは大陸の新古典主義に特有の外来語であり, そのままでは理解不能だったため, 土着語fellowshipおよびcompanyと同定された.

第2に, societyは近世を通じ, 人間の都市的な諸結合の総称として機能した.

第3に, societyの指示対象には時期により特色があった. 16世紀前半には, 特に2人の人のあいだの移ろいやすい関係がsocietyと呼ばれた. 16世紀半ば以降は持続性・組織性がある団体, 17世紀には法人団体がsocietyと呼ばれた. 17世紀後半, societyは公的支配との関係を深めてゆくのと反比例して, virtueとの関係を薄めていった. 17世紀末には, propertyの保護がpolitical societyの唯一の存在理由として浮上した.

現代の主導的な社会科学者のなかにはsocietyの術語としての価値を否定する者が少なくない. しかし上記の諸事実は, societyが巨大な構造的変化の過程をモニターするに好適な, 弾性に富む語句であったこと, そして今でもそうあり続けていることを示している.

著者関連情報
© 2017 日本社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top