社会学評論
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世帯のマネジメントという家事労働
――「生活時間のやりくり・組み立て」に着目して――
柳下 実
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2020 年 70 巻 4 号 p. 343-359

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抄録

家事労働研究は家事労働の分析を通して,世帯内労働の男女不平等を明らかにしてきた.特に量的な家事労働研究は,料理,皿洗い,掃除などのタスクに費やす時間や頻度から家事労働を把握してきた.しかし,これらの研究は世帯員の活動を滞りなく進めるためになされる世帯のマネジメントを見落としているという批判がある.本稿は上記の批判を発展させ,世帯のマネジメントには時間の捻出である生活時間のやりくりや,やりくりの可能性を考慮してスケジュールを構成する生活時間の組み立てが含まれると論じ,さらにそれらを女性が担っていると予想する.
そのうえで生活時間のやりくりを量的調査から捉える試みとして,世帯の構成が変化する結婚や子どもを持つことが生活時間に与える影響に着目し,探索的な分析をおこなった.働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査を用い,固定効果モデルで結婚や子どもを持つことによって,男女の起床・家を出る・帰宅・就寝時刻にどのような変動が生じるのかを検討した.結果から,結婚により男女とも起床・帰宅・就寝が早くなっていた.子どもを持つことは男女ともに時刻へ有意な影響を与えていたが,女性への影響がより大きく,子どもを持つ女性は起床・帰宅・就寝が男性より有意に早い.本稿の知見から子どもを持つ際の活動のタイミングを動かすという労働の負担が,女性に大きいことが示唆された.

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© 2020 日本社会学会
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