社会学評論
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特集「脱逸脱をめぐる当事者活動の社会学」
被害認識の論理と専門職の精神
――過剰債務の社会運動から――
大山 小夜
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キーワード: 過剰債務, 専門職, 被害
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2020 年 71 巻 2 号 p. 247-265

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抄録

本稿の目的は,「日本でクレジットやサラ金などの貸し借りをめぐる問題に取り組む運動団体は,なぜ過剰債務を “被害” と呼ぶのか」に答えるものである.本稿が取り上げるのは,ノンバンクへの強力な規制によって過剰債務の抑止と金融市場の縮小をもたらした「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」(2006 年制定.以下,改正貸金業法)の成立過程である.特に,この法律の成立を主導した全国クレジット・サラ金問題対策協議会(当時)の活動に焦点を合わせる.改正貸金業法の成立後,過剰債務は,専門職の関与も増え,迅速・容易に解決できるようになった(制度化された逸脱処理).一方で,専門職が機械的に債務を整理し,当事者がなおざりにされる状況がある(専門職主導と当事者不在).しかし,このような制度化以前には,専門職と当事者がもっと密接で動的で相補的な関係をもつ時代があった.そのような関係を導き,支えたのが過剰債務を被害とする認識である.一風変わった専門職と当事者による社会運動の形成・展開・帰結を考察する.

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© 2020 日本社会学会
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